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第398号 2009年2月12日
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「熊本発信の次世代エネルギー “水中衝撃波”が世界を変える」
熊本大学工学部教授 伊東繁さん(熊本市)
伊東教授イメージ
座右の銘が「人生万事塞翁(さいおう)馬」という伊東さん。経済が厳しい中で就職できない若者に、「間違った生き方なんてない。豊かな発想ができるのが若さ。自分なりの生き方を探してほしい」と語る。
爆発ピットイメージ 衝撃波実験水槽イメージ
研究施設にある実験室の一つ、爆発ピット。内部は高さ約6メートルの円すい状で、扉の厚さは50センチ。厚い壁を隔てた隣のコントロール室にいても爆発の瞬間の音が、ずんと響く。 一般家庭の浴槽の3倍ある水槽には、約600リットルの水を入れる。かごの中に生のリンゴを入れ、水中衝撃波を与えると、これまで見たことのないリンゴの姿に。
 地球温暖化など環境問題が深刻化する中、化石燃料に変わる新しいエネルギーや新技術の開発が各国で進められています。日本でも、電気自動車やハイブリッドカー、太陽光・風力発電など、さまざまな技術が開発されてきましたが、熊本大学で新たなエネルギー「水中衝撃波」の研究が進められ、世界から注目を集めています。
 「水中衝撃波」の研究を進めているのは、熊本大学工学部教授・伊東繁さん。
 「水中衝撃波」とは、水中で火薬などを用いて爆発を起こした際に発生する「音よりも早く伝わる」強力なパワーのことです。例えば水圧も衝撃波の一つ。物質に衝撃波を与えると破砕できるため、この技術が実用化されると金属や食品などの加工に役立つ上、加工に必要な燃料や資材を削減することもできます。伊東さんは「水中衝撃波」を約40年にわたり研究する第一人者として、世界的に実績が認められ、現在、教授として教育や企業との共同研究、さらにアメリカをはじめとする7カ国で技術指導を行っています。
 「石油が節約できて、低コストで済む“水中衝撃波”は、地球環境保全に貢献できる未来のエネルギーなんです」と語る伊東さんは、宇宙ロケットが描写された教科書にワクワクし、昆虫の観察や理科の実験が大好きでした。進学した九州の大学で衝撃波研究と出会い、現在の道を選択。卒業後は研究を続けるために、国内で唯一専門施設のある熊本大学工学部へ移籍しました。そして、数々の実験データを分析する地道な研究を繰り返しながら、現在の基礎を作り上げてきたのです。
 たくさんの失敗があったが、研究をやめたいと思ったことは一度もなかったという伊東さん。衝撃波技術が主に兵器に転用されることに疑問を抱き、「平和的な利用に転換したい」という強い信念の下、人々を傷つける道具ではなく、暮らしに役立つエネルギーになることを信じて、一歩ずつ進んできました。
 「自分の予測通りにならないのが研究です。失敗すると『何がまずかったか』を考える。それが次のステップへの足掛かりになるんです」。伊東さんは、研究に行き詰まった学生や若い研究者を「失敗は、失敗ではない。いつでも、どこからでも、やり直せる」と温かく励ましては、穏やかな笑顔で見守る優しい先生です。現在、食材の繊維を一瞬にして細かく砕く「水中衝撃波」を応用した調理機器の実用化を控えながらも、フランスやニュージーランドなど諸外国での学会へ出席するなど、熊本から世界中へ新技術の拡大のため、多忙な日々を送っています。
 「環境問題で次に貢献したいのが“水”ですね。将来は、海水から“飲料水”を作り出す衝撃波の装置を実現させたい。日本は、水に恵まれた希少な国ですが、地球全体で、そのまま飲料に使える水分は約2〜3パーセントしかないんですよ」。未来を語る伊東さんの表情は、確固たる平和への思いで輝いています。
実験後のリンゴイメージ 学生イメージ
衝撃波で調理した後のリンゴ。表面の皮の部分はそのままだが、種と芯を除いた果肉は、一瞬でジュースになるため、ポリフェノールなどの有効成分はほとんど壊れない。 世界を変える環境エネルギーの可能性を探る若き研究者の卵たち。毎日爆破実験を行いデータの分析を行っている。
伊東繁さんのお薦め情報
「衝撃・極限環境研究センター」
衝撃・極限環境研究センター
熊本大学にあるセンターは、平成11年に設立されました。事前に申し出ると、伊東さんが開発した「水中衝撃波」装置や食品加工実験の見学、調理された食品の試食体験ができます。全く新しい調理法で加工された、果物や野菜の“未知の味”を体験してみませんか。センター内では、衝撃波によって作製された金属板の芸術作品も見学することができます。

熊本市黒髪2丁目39−1
TEL 096−342−3292
FAX 096−342−3293
http://www.shocomarec.kumamoto-u.ac.jp/



プロフィール伊東繁

国立大学法人熊本大学「衝撃・極限環境研究センター」長・教授。昭和22年(1947)福岡県生まれ。九州大学で衝撃波を学び、研究開発のため熊本大学工学部へ活動の場を移す。以来、衝撃波の研究と開発に携わり、第一人者としての実績を築く。平成11年(1999)からアメリカ機械学会部門委員会幹事・同会国際会議組織委員も務めている。学生の教育、国内外の研究機関との学術交流を行いつつ、衝撃波を実用化することで、環境問題解決の糸口を探求する日々を送っている。工学博士。
【連絡先】 熊本大学
 熊本市黒髪2丁目39−1
 TEL/FAX 096−342−3299
 http://shock.smrc.kumamoto-u.ac.jp/shock/itoh/shock_itoh.html
〒862−8570 熊本県熊本市水前寺6丁目18番1号 熊本県広報課
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