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| 代々続く農家の7代目。「食を支える農家の“誇り”を、次の世代を担う若者にも持ってほしい」と語る。
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| 地元の小学生も参加する種まきは、毎年11月ごろに行われる。収穫した種を絞って菜種油を採り、残った“油かす”は、土に混ぜ込み有機肥料として活用している。
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菜種油の国内産は、わずか0・05パーセントという。遺伝子組み換えのない純粋な菜種油は、ビタミンEを豊富に含む健康食。菜の花から採れるハチミツも今では希少品。 |
九州新幹線鹿児島ルートでは、平成23年(2011)春の全線開業に向けて急ピッチで工事が進行中です。県内沿線では、開業を前にさまざまな取り組みが進められており、中でも「やつしろ菜の花部会」の活動が注目を集めています。八代市の農家7軒からなる有志が、沿線を菜の花で飾ろうと、同18年(2006)に活動をスタート。菜の花を利用し、「安全・安心」を柱に新たな特産品を開発するほか、地元小学校をはじめ、環境問題に取り組む団体などと連携し、活動の輪を広げています。

イグサの生産量日本一を誇る八代市では、農耕地の9割以上を田が占めています。しかし、最近では後継者が減り、休耕田が目立つようになりました。“菜の花部会”が誕生した背景には、「空いていく田畑をなんとか食い止めたい」という地元農家の強い思いがあります。「やつしろ菜の花部会」代表を務める岡初義さんも、そんな危機感を持つ一人でした。新幹線開業を知った岡さんは、八代の農業が抱える問題を解決しようと、菜の花栽培を決意。亡き父の「菜の花ば植えた田畑は、作物のようできる」という言葉の中にそのヒントを見いだしたのです。

目指すのは、菜の花の栽培を通じた環境保全型農業。イグサの休耕田を利用して菜の花を栽培し、環境にやさしい安全・安心な農作物を作ることです。「その第一歩に、線路沿いの休耕田を一面の菜の花畑にすれば、新幹線のお客さんが楽しむだけじゃなく、地元に立ち寄ってくれる。いつかすべての休耕田を復興できるかもしれん」と、岡さんが考えたのは11年前のこと。インターネットを通じて、菜の花で土作りをする他県の農家と知り合い、情報交換をしながら独自に菜の花を栽培。農業としての可能性を探る中で、「菜の花からは、ハチミツや油、肥料も作れる」と、その経済性の高さに確信を得るまでに、数年かかったといいます。
「菜の花は育てる手間のいらんけん、人手不足の農家にぴったりたい。菜の花を咲かせて人を呼ぼう。新しい特産品も作ろう」と、岡さんの呼び掛けに応えた7軒の同志によって「やつしろ菜の花部会」が結成されました。放置された休耕田をよみがえらせる労力は並大抵ではありません。田を覆った雑草を取り除き、固くなった土を耕し、秋に種をまいた菜の花がようやく小さな苗に育っても、冬に雨量が多いと湿気に弱い菜の花は枯れてしまいます。本業である米・イグサ・野菜などの生産と並行して、菜の花を育てる忙しい毎日。「田畑を放置できんという農家の“誇り”が自分ば動かした。“わたしの代で農業を終わらせてたまるか”ていう思いのあるけん、頑張れるとですよ」。その努力は一年ごとに大きく実り、昨年は14ヘクタールもの土地に6百万本の菜の花が咲き誇りました。

「菜の花を中心に、これまでの農家にない新しいネットワークをつくりたい」と語る岡さん。県内外から多くの人が参加して好評を博した「菜の花ウォークラリー」は、今年も3月20日(金・祝)に開催を決定し、奥さんたちでつくる「女性部」の支えで着々と準備が進んでいます。また、地元小学生の“種まき体験”受け入れや、菜種油を給食に提供するなど、“食育”にも力を入れ、地域全体の活力となっているのです。
一方、菜種油の油かすを肥料にして作る“菜の花米”のブランド化に成功。酒造メーカーと提携し、“菜の花米”の酒も開発中です。さらに熊本県立大学の研究グループと、菜種油の廃油を軽油燃料(BDF)に変える研究の協力体制を築くなど、さまざまな団体とがっちりスクラムを組んでいます。このような活動が認められた「やつしろ菜の花部会」は、平成19年(2007)「やつしろ元気大賞」を受賞。「3月いっぱいは、一面に咲く菜の花が待っとりますよ。ぜひ八代に来て、春を満喫してください」という岡さんの笑顔には、真摯(しんし)に農業に向き合ってきた誠実さが溢れています。