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| 釣りが趣味ということもあり、「海を撮るのが一番好き」と語る大野さん。カメラを初めて手にした時からマニュアル操作のプロ仕様を好んで使ってきた。 |
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「全身を太陽の光が突き抜けていく感じがする」という、天草の夕焼けを撮影した作品。その美しさにシャッターを切ることを忘れそうになることもあるという。
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宮司を務める本渡諏訪神社。弘安6年(1283)に建立されたという長い歴史を刻む。敷地内には天然記念物の「本渡諏訪神社の大蘇鉄(そてつ)」が植えられている。 |
熊本県天草市(旧本渡市)には、郷土の風景を撮り続けているアマチュア写真家の“宮司さん”がいます。本渡諏訪神社の第十九代宮司を務める大野康孝(やすたか)さんが撮りためた作品は、数々の写真コンテストで入選し、高い評価を受けてきました。年に数回、地元を中心に個展の開催やギャラリー出展など精力的に活動しながら、多くの人々に天草の魅力を伝えています。

大野さんが写真を始めたのは36歳のころ。妊娠して大きくなった奥さんのおなかを撮影するため、カメラ店を営む友人から一眼レフカメラを借り、子どもの誕生や成長する姿を記録し続けました。「現像した写真が、とてもきれいで感動しました。それから、いろいろなものを撮ってみたいと思い始めたんです」。
以来、写真コンテストへ出展しながら、独学で人物や風景、生き物などさまざまな被写体をフィルムに収めてきました。また、プロの写真家が指導する撮影会にも積極的に参加し、撮影技術も磨いてきたといいます。天草に生きる人の生活感を独自の感性でとらえ、雄大な自然と融合させる大野さんの写真は、プロからも高い評価を受けました。そして今では、東京の出版社からの依頼で、天草取材の撮影を担当することもあるほどの腕前です。

「天草には教会もあれば、素朴な日本古来の漁港の風景もある。山を見渡せば棚田もあって、いろんな顔を持っているんですね。それを包み込む自然がまた魅力的なんですよ。写真を通して、一人でも多くの人に天草を知ってもらいたかですね」と語る大野さん。自身の作品を見て、気に入ってくれた人には快く譲ることも多いそうです。

「写真を始めてから、物事の考え方が変わったんですよ。天草の美しい風景の影にある景観を損なう建物や、足元に転がる多くのゴミの存在にあらためて気付きました」。現実を正面から見据えるようになって気付いた天草の自然を脅かすさまざまな要素に、大野さんは不安を抱いています。
「“人生は預かり物”であると神道の教えにもありますが、例えば700年以上もの歴史を刻むこの神社は、先代から預かり、次の世代へと受け渡すもの。同じように自然や景観も、今を生きる僕たちが預かっているだけなんです。できるだけきれいなままで、次の世代へ渡したい」。そのためにも今の天草を撮り、自然の美しさや環境保護を伝えていくことが大事なのだと語ります。

ファインダー越しに、ありのままの地元の姿をじっくりと観察した体験は、大野さんに写真を撮り続ける大きな意義を与えました。個展や写真集の出版、新聞のコラム連載などを通して、自然を守ることの大切さをたくさんの人に感じてほしいと願っています。
「これからも天草を撮り続けたい」と語る大野さん。古里の風景がもたらす多くの感動を、次の世代に渡すため、今日もシャッターを切り続けています。