熊本県発行のメールマガジン:とっておきの情報満載!
第367号 2008年7月10日
肩に担いだおけの重さは両方で約40キログラム。このてんびん棒をぶら下げて、毎日30キロメートルほどの距離を売り歩いていたという。
てんびん棒は60年来の相棒。太く真っすぐだった棒は、肩に沿った丸みを帯びており、おけの重さと長いふれ売りの年月を物語っている。
浦島さんが育てた“琉金(リュウキン)”。緋色(ひいろ)の尾ひれを、優雅に揺らしながら泳ぐ金魚たちの姿が涼を誘う。品評会では県知事賞を受賞したこともある。
金魚ぇ〜金魚ぇ〜
金魚 きんぎょ〜
鯉の子に ヒブナの子
長洲町に住む浦島義弘さんは、今や日本でも珍しい金魚のふれ売り師です。昭和の良き時代には、独特の節回しを町中に響かせながら金魚を売り歩くその姿は、どんな小さな町や村でも見掛けられたものでしたが、娯楽の多様化や夏祭りの衰退など時代の変化に伴い、ふれ売りの声は次第に街角から消えてしまいました。
長洲金魚の歴史は古く、およそ350年前に記された細川藩の奉書(ほうしょ)に長洲金魚のことが残されています。時を経た今も、長洲町は「金魚の郷」として親しまれており、さまざまな金魚を育てて全国に向けて出荷する、大きな産地の一つとなっているのです。
浦島さんは今年74歳。ふれ売りを始めたのは18歳のころからで、もう60年近くにもなります。養魚場を営んでいた父親に「金魚を売ってこい」といわれて、それから約22年。島根や広島、鹿児島など西日本各地で、金魚を売り歩いてきました。「あんころは、金魚がよう売れよったよ」と懐かしむ浦島さん。時は昭和30年代、どこの家庭にも尾ひれをふわっと広げ、涼しげに泳ぐ愛らしい金魚の姿がありました。当時は、長洲町だけでも500人ほどのふれ売り師がいたといいます。「節まわしは、一人一人違う。おなじみのお客さんなら声を聞いて、玄関から出てきてくれよったよ」と笑う浦島さん。よく通る歌声を高らかに響かせれば、洗面器片手にあちこちから人が集まり、金魚をのぞききこむ人の輪ができていた和やかな時代でした。「今日は泊まっておいで」などと声をかけてくれる常連客も多く、ふれ売りを通じて各地での交流を深めてきたそうです。「炭鉱の町では、炭鉱夫たちがよう買って帰りよった。命懸けで石炭を掘る人間にとって、仕事上がりに金魚を眺めながら、一杯の酒を飲む楽しみが、心を支えとったとでしょう」。誰もが一生懸命に生きた高度成長期、金魚の姿が人々の心を癒し、明日を生きる原動力となっていたのかもしれません。
町の基幹産業の一つである金魚養殖は、後継者不足が心配されています。そのような中で、地元の小学校でふれ売りを教えたり、金魚養殖の研修生の指導を行ったりと、長洲の金魚のために積極的な活動を続けています。「金魚とは物心ついた時から60年以上も一緒。今でも自分で育てた金魚を手放す時は、まるで娘を嫁にやるようなもの。わたしにとって金魚は子どもや家族と同じくらいかわいかですよ」そう語る浦島さんの表情には、金魚への思いが溢れています。
現在は、養殖や販売、品評会への出品などに力を注いでいる浦島さん。「金魚を育てる上で、一番大切なのは水作り。今日は、赤ちゃん金魚に色が付いとった」と顔がほころびます。生まれて2カ月ほどの金魚は、みんなフナのように色が黒く、成長するにつれて赤く色付いて個性が現れるのだとか。浦島さんは金魚を育てる一方で、唯一のふれ売り師として、各地から依頼される催事や取材などを通じて、昔ながらのふれ売り姿と自慢の節まわしを披露する忙しい毎日を送っています。「腹に力を入れた声が150メートル以上届かんといかん。売れる売れんは、声次第たい」。担いだおけに長洲金魚を乗せ、朗々と辺りに響き渡るその声が、伝統文化を未来へとつないでいくのです。
ふれ売りを指導した小学生から、浦島さんへ贈られたお礼の文集。「楽しかった」「面白かった」「ありがとうございました」など、素直で微笑ましい言葉があふれている。
60年前にふれ売りを始めた時から使っている“ガンガン”(金属製の桶)。サビ一つないおけを見ると、手入れを怠らない浦島さんの思いが伝わってくるようだ。
のしこら祭り2008
玉名郡長洲町名物の金魚みこしが躍る町一番の夏まつり「のしこら祭2008」。呼び物の「金魚みこしレース」は15時30分開始。重さ約300キログラムの金魚みこしを1チーム約20人で担いでタイムを競います。まるで巨大な金魚が全力疾走するような姿は迫力満点! また「子ども金魚みこしレース」のほか、「YOSAKOI長洲」「町民総踊り」など楽しい催しが繰り広げられます。
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長洲町夏まつり実行委員会事務局 (長洲町役場 まちづくり課)
熊本県玉名郡長洲町長洲2766
TEL 0968−78−3111
日時 8月23日(土)
場所 「金魚と鯉の郷」広場
プロフィール
浦島義弘
昭和9年(1934)玉名郡長洲町生まれ。長洲町養魚組合副組合長。養魚場を営んでいた家業を継ぎ、同28年から金魚のふれ売りを始める。現在、全国でも数少ないふれ売りの達人として、また長洲金魚の育成者としてさまざまな分野で活動中。
【連絡先】
浦島養魚場
熊本県玉名郡長洲町上磯町3301
TEL 0968−78−0981
〒862−8570 熊本県熊本市水前寺6丁目18番1号 熊本県広報課
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