熊本県発行のメールマガジン:とっておきの情報満載!
第380号 2008年10月9日
隊長として文学隊を引っ張る伊藤さん。「熊本で、自分らしくいられるような人々に出会えたことがうれしい。文学を通じて、熊本に恩返ししたい。」
盛況だった「連詩『わたしからわたしたちへの巻』」であいさつする番頭の跡上さん。会場設営から駐車場の案内まで隊員が行う。終了後には会場を自ら片付ける隊長の姿もあった。
講演会会場では、設置されている本を手に取る人々が多くみられた。活字離れが心配される若い世代の関心も高く、さまざまな本を開いてはしばらく読み継いでいた。
「熊本を核に、生きた文学を発信しよう」と、熊本県立近代文学館(熊本市)とタッグを組んでさまざまな企画を行っている「熊本文学隊」。今年7月の旗揚げ企画「池澤夏樹講演会」をはじめ、数多くの小説家や詩人、文化人などを招き、熊本の人々が文学の魅力に触れる機会をつくり続けています。
隊長は、カリフォルニア在住の詩人・伊藤比呂美(ひろみ)さん。数々の文学賞を受賞し、文壇で活躍する伊藤さんが、熊本での活動を決意したきっかけは、文学がつないだ人々との出会いでした。「親が熊本に住んでいますが、知り合いもいなかったわたしにとって、近代文学館の皆さんと出会ったことが大きなきっかけとなりました。熊本でわたしにもできることがないかと思い、“そうだ、東京から詩人や小説家を呼んで来よう!”と、たくさんの人に声を掛けては熊本へ来てもらいました。作家の生の声に触れ、その思いを聞いていると、まるで本の中に描かれた文学の世界が目の前に立ち上がってくるような力がある。それを五感で感じてほしいんです」。
これまでも町田康(こう)さんや中沢けいさん、津島祐子さんら、そうそうたる顔触れを熊本に招いてきた伊藤さん。「本来ならきちんと支払うべき報酬も払えない中で、皆さん“手弁当”で快く来てくださいます。“温泉と焼酎と馬刺しがありますよ”と冗談を言うんですが、来た人はみんな熊本を楽しんでくれて、その後の創作活動に生かされるのがうれしいですね」。それから身近な人々に声を掛けて、少人数で文学隊の礎を築いてきました。やがて、一歩ずつ積み重ねてきた活動と伊藤さんの情熱が、人々の心を動かし、今年ようやく発足の日を迎えたのです。
隊長をサポートし、実現へと尽力する隊員も現在では約50人。文学を愛する人からプロの作家を目指す人まで、多くの人々が熊本文学隊を支えています。番頭の跡上(あとがみ)史郎さんは、熊本大学で准教授を務める傍らで活動する忙しい毎日。「隊長は、中央や外国で活躍する世界的な文学者たちとの太いパイプを持っています。一方、在熊(ざいゆう)のわたしたちは、中央にも負けない一定水準以上の専門的知識・技術と、地方ならではの温かいもてなしの心を併せ持っています。世界的な文学者の力と熊本の力が融合した時、化学反応が起きて、世界に誇る新しい文学運動が発展していくと思います」と、跡上さんは熱く語ります。
去る8月には、谷川俊太郎さんと四元(よつもと)康祐さん、そして伊藤さんによる講演会「連詩『わたしからわたしたちへの巻』」で、連詩の魅力を紹介。会場は定員を超える老若男女で埋め尽くされ、文学への熱い思いが感じられました。「熊本文学隊とは何か?と聞かれれば、隊長はいつも“ひみつけっしゃ”と言っています。いい年をした文学好きの大人が夢中になって遊ぶような、ワクワクする仲間たちです」と語る跡上さん。
熊本文学隊だけでなく、そこに集う人々の思いや熱意が、まだ見ぬ熊本の可能性を引き出し、新しい文学のステージを築いていく。そんな熊本の文化力が今、動き始めています。
連詩とは戦後、芭蕉の「連歌」を大岡信(まこと)さんや谷川俊太郎さんが中心となって現代詩の世界によみがえらせたもの。リレー式に書きつないだ約40編の詩が、空間を埋め尽くす。
連詩の創作の様子や解説など、3人の楽しいやりとりに会場が沸く。連詩を作る苦しみや喜び、そしてえり抜きの言葉に託した思いを知ると、詩の一つ一つがさらに新鮮な輝きを放つ。
「女の絶望」と「とげ抜き新巣鴨(しんすがも)地蔵縁起」
隊長・伊藤比呂美の新刊「女の絶望」(写真右)と第15回萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)賞に続き第18回紫式部賞を受賞した「とげ抜き新巣鴨地蔵縁起」(写真左)をご紹介します。「生まれてこのかた女です。苦労しどおしの人生ですが、おばさんになったら楽になりました」と、女性の生きざまを語り尽くした「女の絶望」。親の介護、夫、子どもの問題などに直面した伊藤が熊本とカリフォルニアを舞台に、悪戦苦闘するさまを描いた「とげ抜き新巣鴨地蔵縁起」。秋の夜長、“生きる”ことの意味を考えてみませんか。
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熊本県立図書館・熊本近代文学館
http://www.library.pref.kumamoto.jp/
プロフィール
熊本文学隊
枝元なほみ・伊藤比呂美対談「食と食育、そこから文学」、池澤夏樹講演会「世界文学ってなんだ?」、谷川俊太郎・伊藤比呂美・四元康祐「連詩の魅力」と、第一線で活躍する文化人が来熊するイベントを企画し、主催、または熊本県立図書館・熊本近代文学館、同友の会と共催し、好評を得ている。
【連絡先】
熊本文学隊事務局(カフェ「オレンジ」内)
熊本市新市街6−22
TEL/FAX 096−355−1276
http://d.hatena.ne.jp/kumamotoband/
〒862−8570 熊本県熊本市水前寺6丁目18番1号 熊本県広報課
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