
保存会のメンバーは、踊りの名手ぞろい。口説き手との掛け合いも調子良く、優雅な中にも迫力がある踊りは必見。
長年自宅でピアノ教室を開いている野崎さん。教室に使用する広いレッスン場を盆踊りの練習場として提供している。
独特の衣装を身に付けて踊るため、別名「亡者踊り」とも呼ばれる「植柳盆踊り」。その呼称は盆に返ってくる“精霊”を思い出させることに由来する。
八代市植柳地区には、白装束に黒頭巾(ずきん)で踊る全国でも珍しい盆踊り「植柳盆踊り」があります。「植柳盆踊り保存会」は、歴史ある盆踊りを後世にも伝えようと50年以上に渡って活動を続け、江戸時代初期に始まったとされる踊りをさまざまな場所で披露することによって、八代の民族文化の継承に尽力しています。
楽器を一切使わず「口説(くど)き」と呼ばれる歌に合わせて踊る優雅で幻想的な「植柳盆踊り」は、毎年8月14日に「植柳小学校」の校庭を舞台に踊られます。20種ほどある「口説き」の中でも特に有名な「折助・おすて」は、その昔心中した若い男女の物語。「口説き」のみのリズムに合わせるのは難しく、練習の積み重ねと経験が必要です。二人の衣装を再現した白装束で、口説き手を中心に時計回りに円を描きながら踊る何重もの人の輪が、厳かに祈りを捧げるかのようで見ごたえ十分。深く腰を落として、大きくゆるやかに頭上で手を振る女性の動作には、みやびな趣きがあります。「植柳盆踊り」は平成13年(2001)「県重要無形民俗文化財」に指定されています。
『植柳盆踊り保存会』が生まれたのは、昭和30年(1955)。「八代市校区選抜盆踊り大会」で「植柳盆踊り」が3年連続優勝を果たしたことがきっかけでした。連綿と受け継がれてきた地元の踊りも、戦後の苦しい時代には存続の危機にさらされたといいます。「地域の人々と踊りの楽しみを分かち合い、少しでも明るい希望が持てるようになってほしい。みんなを勇気づけたいという強い思いが活動を支えていました」と語るのは平成9年(1997)から2代目の会長を務める野崎陽子さん。自身も、物心ついたときから初代会長である母に手ほどきを受け、踊りを身に付けてきました。
熱心な活動を続ける保存会は、平成2年(1990)に、「県文化財功労賞」を受賞しました。
現在、メンバーは男女合わせて約40名。保存会のメンバーはそれぞれに仕事や家庭を持ちながら限られた時間を工面し、幼稚園や小・中学校、地域の集まりなどで踊りを指導しています。保存会の立ち上げから半世紀を経た今も変わらず、新しく参加を希望する子どもたちが後を絶ちません。
専門家の助言を受けながら、踊りについての歴史や資料などを一冊の本にまとめた野崎さんは「地域の方々が盆踊りを“貴重な財産”だと尊重してくださるから活動できるんです」。踊りを通して楽しみを共有できる“しあわせ”を、後世に伝えることが自分たちの責任であり使命だといいます。
植柳地区の夏祭りの主役、「植柳盆踊り」。いつの時代も変わらず、踊る人と見る人を楽しませてきた幻想的な踊りは今年も多くの人々の魂を魅了することでしょう。
八代(やつしろ)市立博物館「未来の森ミュージアム」
夏季特別展覧会
八代市立博物館「未来の森ミュージアム」では、夏季特別展覧会「描かれた祭礼・八代妙見(みょうけん)宮と藤崎八幡宮 まつりだ!まつりだ!」を開催中です。九州三大祭りの一つとして知られる「八代妙見祭」の歴史資料をはじめ、平成19年(2007)から八代市が続けている調査で、新たに発見された話題の絵巻も公開中!江戸時代から昭和の祭りの様子を鑑賞しませんか。
期間 8月23日(日)まで
時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休み 月曜
■八代市立博物館 未来の森ミュージアム
熊本県八代市西松江城町12-35
TEL 0965-34-5555
FAX 0965-33-9200
http://www.city.yatsushiro.kumamoto.jp/museum/index.html
植柳盆踊り保存会
昭和30年(1955)に八代市植柳地区に住む十数名の有志で結成。昭和46年(1971)に八代市「無形民俗文化財」の指定を受ける。同62年(1987)沖縄で開催された「九州民俗芸能大会」へ出場。民俗芸能分野での活動の功績が認められ平成2年(1990)に「県文化財功労賞」を受賞。同13年(2001)、「県重要無形民俗文化財」の指定を受ける。同17年(2006)文化庁委嘱・財団伝統文化活性化国民協会より「地域伝統文化功労者賞」受賞。翌年、「伝統文化こども教室」を正式にスタートし、植柳に伝わるもう一つの伝統芸能「植柳棒踊り」を継承する活動も展開。現在に至る。
【連絡先】
「植柳盆踊り保存会」会長 野崎陽子
熊本県八代市下町植柳1048-3
TEL 0965-34-5564