一つ一つゆっくりと“音楽”に触れます。音楽が大好きな気持ちや楽しむ気持ちは、どんな人だって、みんな同じです。
3月の音楽祭に向けて猛練習中。スタッフも一緒に体を動かします。「できるしこ!」を胸に、みんなの心が一つになります。
使用している楽器は、インターネットなどで呼び掛けて、一般の家庭などから譲ってもらったものを大切に使っています。
「オハイエ」は「オハヨー イエーッ!」から生まれた元気が出る合言葉。写真を撮るときも「ハイチーズ」の代わりに「オハイエー!」。
足踏みも手拍子も、音を鳴らしたり、リズムを刻むことはすべて“音楽”。この音楽を言葉代わりのコミュニケーションツールとして、障がいのある人もない人もみんな一緒に音楽やダンスを楽しむ「とっておきの音楽祭」を開催する「オハイエくまもと」。街全体がステージとなるその音楽祭に向けて、猛練習の日々を送っています。
「オハイエくまもと」は今年4月に設立しました。そのきっかけは、宮城県仙台市で毎年開催されている「とっておきの音楽祭」の活動を記録した、ドキュメンタリー映画「オハイエ!」。全国各地で上映運動が行われ、熊本では2008年7月に上映会が開催されました。上映会を支援した
ボランティアメンバーから「熊本でも“とっておきの音楽祭”をやりたい!」という声が上がり「オハイエくまもと」がスタートしたのです。メンバーたちが草の根運動で多くの人に趣旨を伝え、賛同した人たちの会費で運営をまかなっています。
「オハイエくまもと」には“パフォーマー”と呼ばれる知的障がいや発達障がいのある人たち20数名とその倍以上のボランティアスタッフが在籍しています。スタッフは、医師や学校の先生、カメラマンや音楽教室の先生など職種もさまざま。家族や友人、仕事のつながりからメンバーがどんどん増えていきました。「それまで下を向いていた人が、楽器を触ると笑顔になったんですよ。言葉を交わすことだけがコミュニケーションじゃないんです」と生き生きとした表情で語る「オハイエくまもと」の会長・入部(いりべ)さん。音楽が持つ“力”を実感しています。
「オハイエくまもと」の日常プログラムは、障がいがある人もない人も、互いに思いやりの気持ちを持って楽しく練習しながら“人間力”を身につけること。その発表の場が、「とっておきの音楽祭」なのです。
毎週日曜に行われている合奏練習では、一人のスタッフで複数のパフォーマーを教えることは難しいため、マンツーマンで教えています。中学校で音楽の教師をしているスタッフは「障がいがある人に、どう教えればよいか気を使っていたけど、気を使うこと自体が壁を作っているということに気付きました。“一緒に音楽を楽しむ”それでいいんです」と語ります。「普段はたわいもない世間話をしています。みんなとても面白いんですよ」とスタッフたちは自然体です。
“音楽の力で心のバリアフリー”を目指す「オハイエくまもと」のスローガンは「できるしこ!」。これは“できる分だけ”を熊本弁で言い換えたものです。相手に気を使ったり、少し無理をしたりするボランティアはその気持ちや行動自体が壁(バリア)になってしまい“バリアフリー”にはならない、との思いが込められています。無理をしないこと、それがお互いの心を通じ合わせることなのです。
来年3月の“音楽祭”開催に向けて「パフォーマーを増やしていきたいし、そのためにはボランティアの人数をもっと増やしていきたい。特に大学生や高校生にもっと参加してほしいですね。若い世代の「できるしこ!」を待っています」と入部さん。本格的な活動が始まってまだ半年。これからも人と人とのつながりが少しずつ大きな輪となり「オハイエくまもと」の活動もまた、広がっていきます。