暮らしに向き合える場所を求めて町屋は理想の住まいのスタイル
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熊本に住み始めて購入した愛用の自転車。JR熊本駅までは歩いていけるし、阿蘇くまもと空港まで行くバスも近い。熊本市中心部までも自転車ですぐなので車がなくても困らない。もし車が必要なときは、ご近所さんに声を掛けるとみんな心よく車を出してくれる。

 「熊本城」のお膝元、城下町の風情が残る熊本市小沢町で暮らす池田秀紀さんと菜衣子さん。二人が住んでいるのは、およそ築100年という町屋です。家のすぐ裏には坪井川が流れ、川に面した窓を開けると涼しい風が通り抜けていきます。「この町屋に住もうと、直感で決めました」と話すのは秀紀さん。20年間も空き家で、まるで廃墟のようだった町屋は、二人の手によって少しずつ息を吹き返してきています。

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苦労した漆喰塗り。初めは二人で挑戦していたが、あまりの難しさに助けを求めたところ、左官屋さんなど町の人たちが手伝ってくれた。困ったときには誰かに相談すると、町のネットワークを駆使してすぐに駆けつけてくれる。

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2階部分が仕事部屋。現在はキッチン部分の改装が進行中。町屋独特の造りに悪戦苦闘しながらも、こだわりを持って奮闘中!

 間もなく結婚して1年を迎える二人は、結婚当初から2、3年後には東京を離れようと決めていたそうです。それは、もっと日々の暮らしを大切にした生活を送りたいと思ったから。「お金を稼ぐために仕事に追われ、家でおいしいものを食べることも、家族で過ごす時間もなくなっていくという、慌ただしい生活に疑問を感じていました。例えば、家を改装することが生活の一部として楽しめるような、そんな暮らしがしたいと感じていたんです」と話す秀紀さん。二人は職業柄、インターネットが通じる環境さえあれば、仕事をすることができます。理想の住まいを求め、二人で西日本各地を巡りましたが、“住めるところ”はたくさんあったものの、“ここだっ!という決め手”に欠けていたそうです。そんな二人が熊本を訪れたのは、今年の5月のこと。きっかけは東日本大震災。かねてから面識のあった熊本出身の建築家・坂口恭平さんの呼び掛けにより、避難者を受け入れる「ゼロセンター」(熊本市)を訪ねることにしたのです。


 「初めて熊本の町を見たときは、私の故郷である札幌に似ているな、と思いました。北と南で全く違う環境のはずなのに、なぜかなじみがあって、妙にしっくりきたんです」と菜衣子さん。今まではなかった、肌で感じる直感的なものを感じて熊本の町が気に入った二人は、「この町に住みたい家があったら引っ越そう」と、熊本市役所にも相談して、現在の住まいの大家さんと出会います。好きなように改装して構わないという大家さんの言葉を受けて、熊本で生活を始めることを決意。現在は、徹底的に改装しながら、自分たち好みの住まいを築いています。常に自分たちに合った暮らし方を探る、“冒険”を続ける二人は“暮らしかた冒険家”と名乗り、改装の様子をツイッターやユーストリームで配信して、多くの人に町屋の価値を知ってもらう試みも実施しています。

小沢町を含む新町・古町地区では、フェイスブックがイベントの開催告知などで活用されている。このようなツールの活用で、人のつながりの輪がどんどん広がっていく。
(上のユーストリームで、作業の様子を見ることができます。)

 「町屋に住んでいると、“古いものが好きなんですね”とよくいわれます。でも、それは違うんです。古いものが好きだから町屋に住んでいるのではなくて、町家が今の自分たちの生活レベルに合った“本物の家”がここだったということです」。ただ、町屋には、町屋ならではのマンションなどにはない価値があるのだといいます。その価値は住まう側だけでなく、所有する側も認識しなければ、いずれ取り壊されたり、朽ち果てたりしてしまいます。だからこそ町家の良さを発信し、住まう人、所有する人双方にその価値を見直してほしいのだそうです。
 町屋の熊本での生活が始まっておよそ3カ月。ここだっ!という直感は間違っていなかったと確信しています。それは、“町の空気”―例えば、わが町を愛する町の人たちの熱い想いだったり、引っ越してきたばかりの二人を宴会に招待してくれる温かさだったり―が二人の生活のリズムと合っているということなのかもしれません。“暮らしかた冒険家”の二人の熊本暮らしは、まだ始まったばかりです。

取材ノート

熊本就労支援・UIターン

熊本県移住・定住ポータルサイト

池田秀紀さん 菜衣子さん

>> 暮らしかた冒険家 hey, meoto.
※ツイッター
 140文字以内の“つぶやき”を投稿するコミュニケーションツール。

※ユーストリーム
 リアルタイムで動画配信ができる。視聴も無料。

※フェイスブック
 世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス。
 ユーザー同士でさまざまな情報を共有することができる。

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