福岡から熊本の阿蘇郡高森町に移り住んで10年の豊田希さん。渓流釣りが好きなご主人の趣味が高じたのがきっかけでした。豊田さん自身は、南阿蘇のおいしい水や酒粕、米ぬかなど自然素材からせっけんを作り、販売するお店「Ladybug」を営んでいます。「南阿蘇の一番の魅力は雄大な自然!」と話す豊田さんは、夜空にきらめく無数の星たちや、四季折々に色合いを変えていく美しい山々の風景に、毎日のように驚かされているそうです。そんな南阿蘇の魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたい、南阿蘇を訪れてこの自然を体感してほしいと始めたのが「南阿蘇マルシェ『てんとういち』」。地元のみんなが、自慢のものを持ち寄って販売する、いわば、南阿蘇の魅力を集めたバザールです。
祖父母が熊本で暮らしていたこともあり、豊田さんにとって熊本は幼い頃から慣れ親しんでいた場所。福岡の都会暮らしから田舎暮らしにスタイルが変わることへの不安はなく、「教科書で習ったあの、阿蘇のカルデラに囲まれて暮らせる!」と、ワクワクした気持ちの方が大きかったそうです。その一方で、高森町に移住した当初は、野菜はどこで買うのか、お米の精米はどこでするのかなど、分からないこともたくさん。そんなときに手を貸してくれたのが、当時住んでいた家の大家さんや近所の人たちでした。「はじめは、知り合いがいなかったので、寂しい気持ちもありました。でも小さな町だからこそ、みんなすぐに覚えてくれるし、気にかけてくれる。少しずつ友だちもできて、特に子どもが生まれてからはママ友も増えました」と当時を振り返ります。ママ友の中には、よそから嫁いできた人もたくさんいること、みんな、人と話す場を求めていることに気付かされたといいます。
その頃肌の弱い子どものために始めたせっけん作りが口コミで評判になり、周囲のリクエストを受けて、作り方を教える教室を開くことに。みんなが集まると子育ての悩み相談からパン屋さん・雑貨屋さん情報までさまざまな会話が飛び交い、それまで知らなかった阿蘇の魅力を発見することにもつながったと言います。これをきっかけに豊田さんは“人と人がつながる場を作りたい”という思いをより強くしていったのです。
その思いを込めて始めたのが「てんとういち」。採れたての農産物、手作りのパンやスイーツ、雑貨などが並びます。2011年3月にスタートして以来、11月までに3回を開催。回を重ねるごとににぎわいも増しています。「『てんとういち』は“阿蘇のいいもの”をお披露目する場。ここに来て、阿蘇の魅力をもっと知ってもらいたい。そして、ここを訪れたことをきっかけに、人と人とがつながってくれれば」と語る豊田さんの意気込みが、その笑顔に表れています。