玉名郡南関町の「大津山阿蘇神社」鳥居のすぐそばにある「稗島珈琲店」。農業をする傍らこのお店を営んでいるのは福岡県大牟田市から移り住んだ稗島寛浩さん。中学生時代、自転車で南関まで通って山登りを楽しんでいた稗島さんは、少年のころから親しんでいた南関の地で農業をしたいと4年前に移住。現在は2人の子どもに恵まれ、一家4人で南関の人々と共に心豊かな日々を送っています。

 稗島さんは念願だった農業に携わる中で、南関町の生産者の平均年齢が70歳であることや次世代の担い手がほとんどいない状況を知りました。このままでは南関町の農業が途絶えてしまう可能性があることに危機感を抱き、自身が担い手になるべく、農業に一層力を入れています。
 南関町で知り合った林田弘治(はやしだひろじ)さんは、地産地消をモットーに昔ながらの農業を営む稗島さんの“師匠”です。「山の元(はじめ)自然学校」を主宰し、地元の子どもたちをはじめ、町内外の人々へ自然のもたらす恵みや先人の知恵・工夫などを広く発信する自然環境学習の取り組みを行っています。
 稗島さんは林田さんの下で農業に向き合い、山で開かれるバーベキューイベントなどに参加する中で、「人と人とのつながり」や「自然のもたらす恵み」を実感。林田さんの地元の人々へ向ける熱いまなざしと農業に対する真摯な姿勢を見て、稗島さんは「ずっと南関で生きていこう」と決意を新たにしました。

 林田さんの背中を見ながら、無農薬の野菜、小麦、大豆、お茶を育て、旬の季節になると採れたての農作物を隣近所におすそわけ。物々交換は日常の光景です。隣近所はみんな“家族”のように関わり、共に暮らす昔ながらの精神が今も息づいている南関町。「子どもが育つ環境としても、とても良い。たくさんの大人に見守られて育つと、子どもたちは安心して伸び伸びと成長できますよね」と笑いながら話す稗島さんの横で、長男の陽絆(ひろき)くんは元気いっぱいに遊んでいます。
 南関町の暮らしは、稗島さん一家にお金には代えられない価値をもたらしました。稗島さんは現在、インターネットも携帯電話もない生活を送っています。周囲の人々との日々の関わりの中で、「本当に必要な情報は人と人のつながりの中から入ってくる」ことに気付いたのです。

 東日本大震災が発生した時には「自分に何かできることはないか」と、震災2日後に自ら役場に出向き、町と協力して被災者を受け入れられる住環境を整えました。やがて移住希望者が稗島さんの元を訪ねるようになると、相談を受けたり、南関町を案内したりと時間を惜しまずに支援。神奈川県から移住してきたミュージシャンの平井正也さんをはじめ、移住者との新たなネットワークも広がっています。たくさんの“縁”を生かし、音楽やワークショップなど多くのイベントを開催。地元の人々に音楽や文化を紹介し、楽しんでもらう活動にも力を入れています。
 今や、移住者としてではなく、“南関人”として地元の人々をけん引する稗島さん。「当面の目標は、さらに移住者を受け入れるための雇用の創出。耕作放棄地の整備や農業など仕事はたくさんある。若いもんが動いて町を盛り上げて将来につなげたい」と語る稗島さんの挑戦は続きます。

取材ノート

熊本就労支援・UIターン

熊本県移住・定住ポータルサイト

稗島寛浩さん
>> 稗島珈琲店

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