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 熊本で活躍している「その道」の達人が注目している「熊本」は、もちろん「今が旬!」のものばかり。そんな達人が週替わりで語るコラムです。

九州の歴史家・高嶋幸世さんの大発見!

 今年5月、世界が驚く歴史的事実が熊本出身の女性歴史研究者によって発見されました。

今回は、伊井さんのエッセイでも語られた高嶋さんの発見について、詳しくご紹介します。
 高嶋さんが発見したのはカナダ人牧師、故ハワード・ノーマン氏の論文「日本主義」。ノーマン氏は明治38年に長野県で生まれ、18歳まで日本で過ごした後、カナダに戻り、さらに戦後に再来日して関西学院大学教授を12年務めた人です。

 高嶋さんによると、論文「日本主義」は、昭和13年にノーマン氏が神学修士論文としてアメリカの神学校に提出したもので、日本の神道や天皇制などについて論じられているそうです。この論文では、日本の国家神道や天皇崇拝について、軍国主義をあおるものと危険視する一方、伝統文化として神社神道を尊重すべきと主張し、天皇制そのものは否定せず、また、日本は自立的な民主主義の可能性を持っていると述べられています。

 この論文が影響を与えたと高嶋さんが考えたのが、GHQの「神道指令」。神道指令とは、対日占領政策の一つで、国家と神道を分離し、宗教の一つとして神道神社存続を認める、という政策で、現在の天皇制と神道の在り方の基になっているものです。対日占領政策の策定スタッフには、ノーマン氏の友人で情報将校だった故エドウィン・ライシャワー氏と、ノーマン氏の弟で、カナダの駐ワシントン外交官だったハーバート・ノーマン氏がいました。彼らは、それぞれの分野の専門家としてお互いに議論を戦わせる手紙を送りあっており、その中でハワード・ノーマン氏の考え方が占領政策に反映されていったと、高嶋さんは考えたのです。

 「神道指令」の原案が誰からもたらされたのかということは、占領史研究家の中でも言及されていない問題でした。日本からだったのか、アメリカからだったのか、対日占領政策の中で、資料もなく謎の一つになっていました。

 そこで、高嶋さんはこの仮説を5月のカナダ・キリスト教史学会で発表。日本占領政策策定の過程や根拠の不明点を明らかにする可能性を示したとして、学会から高い評価を得ました。



 この発見により、今後、日本についての専門知識を持つスタッフが少ない中で、いかにして占領政策が策定されていったのか、また、策定の過程で、日本在住宣教師や貿易商など民間人の情報がどのように用いられていったのかなどを明らかにする研究者が増えることが予想されます。占領史研究の中でも、今まで十分に研究が行われていない分野。今後、戦後史研究の分野で注目を集め、ほかの研究者の参入により、さらに新たな発見につながりそうです。

◇たかしま・さちよ
1962年八代市生まれ。東京大文学部国史学科卒業、同志社大大学院神学研究科博士課程単位取得。専攻は日加関係史。



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