第335号
2007年11月29日
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四季折々に、季節感や情緒あふれる郷土の祭りやイベントが、熊本県内各地で行われています。その由来をひもときながら、地域に伝わる歴史や人々の思いを盛り込んだ風物詩を連載でご紹介します。
今月は、戦国の世、島津氏の影響を受けた水俣(みなまた)市袋(ふくろ)に伝わる、市指定無形民俗文化財の「水俣の棒踊り」と、かつてこの地で盛んだったサトウキビ栽培を復活させ注目されている「黒砂糖作り」です。歴史や伝統に根差した文化の継承と、新しい文化の創造を目指して町づくりや観光振興に積極的な水俣市をご紹介します。(11月15日、11月29日の2回シリーズ)
次世代につなげたい、水俣の文化
■水俣以外でも踊られる「袋の棒踊り」
11月3日に「筆塚祭」が行われる袋天満宮
徳富蘇峰が使った筆が
収められている筆塚
「水俣の棒踊り保存会」では、毎年11月3日、袋天満宮で行われる「筆塚祭(ふでづかさい)」で、「袋の棒踊り」を踊っていました。「筆塚祭」は、徳富蘇峰(※)が使った筆が収められている筆塚の前で、書道展や相撲大会を行い、子どもから大人までが文武を競う祭りです。しかし、それぞれにほかの出し物などで忙しく、最近では保育園児が踊るだけになっています。また、保存会が、地元のほかのイベントなどで「袋の棒踊り」を披露する機会も少なくなっており、もっぱら出演依頼を受けて、地元以外で踊っています。
昭和54年、「袋の棒踊り」の勇壮な踊りを教えてほしいと、保存会に、陸上自衛隊熊本駐屯地のある連隊から依頼がきました。当時の保存会会長以下7人が、3日間泊まり込みで教え、以来この部隊では、毎年4月29日(みどりの日)の「自衛隊祭り」で披露されています。
また、水俣の社会学を研究している熊本学園大学の先生方数名は、水俣の文化を習得する目的で、月に2回、保存会のメンバーから「袋の棒踊り」を習っています。
後継者を育てていくためにも、地元で披露する機会を増やしていかなければと考えています。長年「袋の棒踊り」を見て、目が肥えている地元の人に見てもらうことが最も励みになりますし、子どものころ習得した踊りを続けていく場が必要です。この無形民俗文化財を絶やすわけにはいきません。水俣に残っている若者は踊り続けてほしいですし、水俣出身でなくても関心がある人は歓迎します。好きなものは長続きし、必ず上手になります。1人でも2人でも保存会に入ってもらい、「袋の棒踊り」を絶やさないよう伝えていきたいと思っています。
(以上、「水俣の棒踊り保存会」会長にお話しを伺いました。)
■水俣の特産「黒砂糖作り」を再興
なだらかなミカン畑だった所を段々畑にして、サトウキビを栽培しています
水俣では、その温暖な気候から、大正から昭和30年ぐらいまで、盛んにサトウキビが栽培され、黒砂糖が作られていました。以前、この袋地区周辺には、約70軒のサトウキビ農家がありました。しかし、その後砂糖の販売が自由化され、外国から安い砂糖が輸入されるようになったことで、栽培しやすく収入も多いミカンに切り替えられ、サトウキビ畑はほとんどなくなりました。
ところが、平成に入って、自然食が見直されはじめ、ミネラルやビタミンを豊富に含んだ黒砂糖作りを復活させようという話が持ち上がりました。そして、平成2年、水俣市役所が、種子島(たねがしま・鹿児島県)から20アール分のサトウキビの種を取り寄せ、農家に無償で分けて栽培を始めたのです。徐々に作付けを増やし、今では15〜6軒の農家が数アールから十数アールほど栽培するようになりました。
サトウキビ栽培を復活させて2〜3年後、組合が黒砂糖の加工所を建てました。現在では、ほとんどの黒砂糖がここで製造されています。黒砂糖は、水俣の物産館などで販売されています。
薄茶色の黒砂糖(ショ糖を多く含む)
サトウキビの糖は単糖(ブドウ糖、果糖)です。それが刈り取るころになると、根元の方からショ糖に変わっていきます。ショ糖と単糖がミックスされている黒砂糖は、ショ糖が多いほど薄茶色になり、単糖が多いほど黒みがかります。水俣の黒砂糖は、作り手によって、その色や食感が違うのです。
また、これまで栽培されてきたサトウキビは、種子島など南西諸島の気候に合った品種でしたが、九州・沖縄農業研究センター(合志市)の指導で、寒地に向くものも栽培されはじめました。これまで栽培されていたものより、良質で収穫量が多く、これからの主流になると期待されています。
この地域では、子どもたちに農業に親しんでもらおうと、「遊びの学校」が開かれています。この学校では、黒砂糖作りの一部が体験、見学できます。昔、水俣で盛んに行われ、今また復活した黒砂糖作りを肌で感じてもらいたい。そして、無添加の黒砂糖そのものの味を、子どもたちに覚えてほしいと願っています。
※徳富蘇峰(とくとみそほう)
1863年(文久2年)生まれ。明治から昭和にかけて活躍した歴史家、評論家。水俣出身。民友社を結成し「国民之友」を主宰。その後「国民新聞」を発刊。著書に「近世日本国民史」「蘇峰自伝」など多数。
◆「袋の棒踊り」に関するお問い合わせ先◆
水俣市 教育委員会生涯学習課文化振興係
TEL 0966−61−1639
FAX 0966−63−9502
◆「黒砂糖」に関するお問い合わせ先◆
水俣市 商工観光課商工観光係
TEL 0966−61−1629
FAX 0966−63−5547