文豪夏目漱石は、明治29年、29才の時に、熊本の旧制第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師として赴任し、英国留学までの4年3カ月を熊本で過ごしました。 漱石が最初に熊本に降り立ったのは「池田停車場」(現在のJR上熊本駅)。漱石は、この駅から人力車に乗って五高に向かう途中、熊本市内を見晴らすことのできる京町の新坂にさしかかった時、「ああ、熊本は森の都だなあ」とつぶやいたそうです。このことから、熊本市は「森の都」と呼ばれるようになりました。 このほか漱石作品の「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」という書き出しで知られる小説『草枕』や、登山をして道に迷う2人の会話が楽しい『二百十日』は、熊本時代のエピソードをもとに著されています。このように、漱石文学の礎となったゆかりの地が、熊本には多く点在しています。
閑静な住宅の並ぶ城下町の一角、熊本市内坪井(うちつぼい)には夏目漱石が熊本時代に住んだ5番目の家があります。この家で、待望の長女・筆子は生まれました。 現在、記念館として一般公開されていて、内部には漱石直筆書簡や、熊本時代の代表的な俳句、五高教師時代の写真などが展示されています。
(問)夏目漱石内坪井旧居 TEL・FAX 096−325−9127 開館/9:30〜16:30 休館/月曜(祝日の場合は翌日)、 年末年始 料金/高校生以上200円 小中学生100円
熊本市の西側にそびえる金峰山(きんぽうざん)の北側にあり、有明海に面した小天温泉(玉名郡天水町)。この温泉を訪ねて滞在した時の体験をもとに、のちに漱石が著わしたのが小説「草枕」。 この小説「草枕」に登場する“那古井(なこい)の湯”は、小天温泉がモデルとなっています。 明治30年に実際に漱石が滞在した離れは現在も保存されており、「漱石館」として一般に公開されています。 近くには温泉旅館や有明海を一望できる「草枕温泉てんすい」があります。
(問)天水町草枕の里振興課 TEL0968−82−3111 FAX0968−82−2310 http://www.pluto.dti.ne.jp/%7Ejeep/
小説「草枕」で「“おい”と声を掛けたが返事がない」という一節で登場するのが「峠の茶屋」。 当時は、熊本市島崎から天水町小天に通じる道に、2カ所の茶屋がありました。一つは金峰山登り口の鳥越(とりごえ)の茶屋、もう一つは、小天と熊本市河内の分岐点にある野出(のいで)の茶屋です。 鳥越の茶屋は、当時の資料をもとに再建されており、今でも峠を行き交う人々の憩いの場となっています。
(問)峠の茶屋公園 TEL096−277−2157 開館/9:00〜17:00 休館/火曜日(祝日の場合は翌日) ・年末年始