●今回は、熊本県こども総合療育センターの坂本公宣所長にお話を伺いました。
『熊本県こども総合療育センター』ではどんなことをしているのですか?
障害があったり、障害の疑いがある子どもたちの早期発見・早期療育を目指して、診断や療育の方向づけを行うことが、このセンターの主な業務の一つです。ここでは、まず、整形外科と小児科の医師が子どもたちを診察し、その後、機能訓練士や保育士なども加わってどういうアプローチをするのが最適かを総合的に検討し、その子に応じた療育を行っていきます。そして、障害が少しでも軽減された状態で家庭や地域の療育施設に帰っていただくことを目指しています。なお、現在このセンターの再編整備事業を進めており、去る6月1日から入所棟や通園棟の使用が始まったばかりです。
| ※療育…医療、訓練、教育などにより、障害をできるだけ克服し、その子どもが持つ発達能力を有効に育て上げ、自立に向かって育成すること。 |
| 元北九州市立総合療育センター所長 高松鶴吉先生による |
子どもたちはどのようなことがきっかけで来ているのですか。
そうですね。最も多いのは、各地域の保健所の健診を受けてこのセンターへいらっしゃるケースです。3カ月健診、6カ月健診、1歳半健診などですね。あとは医療機関から紹介されていらっしゃることもあります。
今回の再編整備事業で変わったことは何でしょう。
一つは、これまで肢体不自由児が中心だった通園部門に、新たに知的障害などの子どもたちも通園できる知的障害児通園施設が加わったという点です。
肢体不自由児の中には、ほかの障害を併せ持っている子どももいます。また、自閉症、多動障害、あるいは言葉の発達に遅れがある子どもも増えてきています。これまではそういう子どもたちへの対応が必ずしも十分ではありませんでした。これからは、肢体不自由児だけでなく、より多くの発達障害の子どもに対応できるようになります。
もう一つ変わったことは「地域療育支援部門」をつくったことですね。
このセンターで療育を受けた子どもたちが、自宅の近くで継続して療育を受けられるように、地域における療育を支援する専門の部署を設けました。具体的には、専任スタッフを各地の地域療育センターなどに派遣し、地域の療育関係者に対して、療育の指導を行ったり相談に応じたりすることで、地域療育の質の向上を支援していきたいと考えています。
施設の造りも今までとはずいぶん違ったものになったようですが。
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| 新しい施設内の様子 |
それが大きく変わった三番目の点です。具体的には、それぞれの建物を通園、入所、訓練、外来などの用途別に分棟配置させたり、さまざまな障害のある子どもでも生活しやすいユニバーサルデザインに配慮した構造になっている点です。それから、丸みのあるこう配屋根にしたり、県産木材を使用することで全体的に優しくぬくもりのある雰囲気にしました。さらに、入所棟には玄関を設けて、子どもたちが学校や訓練棟から「ただいまー」と「家に帰ってくる」ような雰囲気が味わえるようにしました。
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| サテライトキッチン |
また、入所している子どもたちの環境をできるだけ家庭に近づけたいと考えました。そのため、生活棟では看護師も白衣ではない普段着風のユニホームで過ごします。また、入院施設の食事は通常、調理室でまとめて作って配ぜんするのですが、生活棟に「サテライトキッチン」という小さな台所を別に設け、そこで調理の最後の仕上げをしています。家庭と同じように子どもたちから見えるところで料理が出来上がるようにしたのです。
このようにして、必要な療育を終えた子どもたちが、自然に家庭に戻れるようにしたいと思っています。
全国でも先駆的な取り組みのようですね。
これは老人施設では主流となっている「ユニットケア」という考え方をヒントにしたものですが、子どもの療育施設では全国で初めての試みだと思います。このセンターでは「ユニットケア」を、「子どもたちの生活や行動パターンなどに配慮して生活単位を小規模にし、家庭環境に近い空間の中で生活面の個別支援を通じて、子どもたちの生活力の向上を図る取り組み」と考えています。
具体的には、生活棟は20人ずつの2ユニット(集団)で過ごします。それぞれのユニットには、高学年の児童の利用を想定した個室が4部屋と、低年齢の子どもを想定した4人室が4部屋、ほかに食事をしたり友達と遊んだりする部屋などがあります。4人室も部屋の中を家具で仕切ることでプライベートな空間が確保できるつくりになっています。また、食事の後片付けや布団の上げ下ろしなど、子どもたちが自分でできることは自分でやれるような工夫もしています。
さらに、食事の時間や入浴時間に配慮し、職員もできるだけ同じ子どもに対応できるような態勢をとっています。
この「ユニットケア」は子どもの療育施設では全国初の試みですので、これからもいろいろな方のご意見を参考にしながら運営していきたいですね。
障害のある子どもたちの発達能力を最大限に生かし、自立への支援を目指しているセンターですね。今日はありがとうございました。 |