●今回は豊かな緑に囲まれた熊本市の立田山にある熊本県林業研究指導所の下林恭所長にお話を伺いました。
熊本県林業研究指導所は、どういうお仕事をしているのですか。

熊本県林業研究指導所 |
森林は、水を蓄えたり、土砂崩れを防いだり、地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素を吸収したりするなど、さまざまな公益的機能を持つとともに、持続的利用が可能な木材の生産を担っています。しかし、近年、林業経営の採算性の悪化や林業の担い手の減少などにより、手入れのされていない森林が増え、森林の持つ公益的機能が低下しつつあります。そこで、森林の持つ公益的機能の向上や、木材などの森林資源の有効利用による林業の活性化を図るため、森林・林業・木材に関する研究や、林業担い手の育成、林業技術の普及、県民の皆さんへの森林・林業の普及啓発などに取り組んでいます。
具体的にどんな研究をされているのですか。

間伐材を利用したシカ被害対策のための研究 |
大きく2つの分野に分かれます。
一つは、木を植え、育て、収穫するための研究です。県内にはさし木により造林されたスギが多く、各地域にさまざまな品種のスギが植えられています。そうした品種ごとの特性を把握して生かすための管理方法の研究をはじめ、伐採期限を延ばし太い木を生産することで収入を得ながら森林の公益的機能を長期にわたり維持するための研究や、広葉樹(ケヤキ、センダン、カシ、ミズメなど)を育てる技術の研究、森林の病害虫による被害やシカが樹木の皮をはぐ被害を防ぐ研究などを行っています。

スギ平角材強度試験 |
もう一つが、森林資源の有効利用に関する研究です。県の面積の約63%が森林で、そのうち約60%はスギやヒノキといった人工林です。そのスギやヒノキを住宅資材としてより多く使ってもらうため、強度性能を証明して柱や梁(はり)としての利用を促進する研究や、割れたり寸法が縮んだりしない木材にするための乾燥技術を開発する研究、土木用の木柵など木材の用途を広げるための研究などに取り組んでいます。また、シイタケなどのキノコや木炭などの特用林産物の生産に関する研究も行っています。このほか、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されたことにより、近年、木材の強度や乾燥の度合いを調べてほしいという依頼が増えていて、それらの試験も行っています。
現在取り組んでいる林業の技術や知識の普及指導などについて教えてください。

技術習得のための研修会の様子 |
山の斜面で、木の伐採などを行う林業は、危険を伴う作業が多く、さまざまな技術の習得が必要となります。そこで、林業に携わる方々の技術向上や、林業後継者の技術習得のための研修を行うなど、林業の担い手の育成に力を入れています。ほかにも、県内の林業関係者への巡回指導などにより、林業に関する技術や知識を普及する取り組みを行っています。
また、県民の皆さんに、環境の保全という点から森林や林業の果たしている役割について理解していただくことも重要な取り組みの一つと考えています。

立田山森林教室の様子
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そのため、研究成果の発表会やホームぺージによる情報発信を行っていますし、体験学習として小・中学生を受け入れたり、職員が講師として学校に出向いたりしています。中でも、毎年、小学生とその保護者15組を公募し、6月から翌年2月まで実施している「立田山森林教室」は、植物や昆虫、キノコの観察や、炭焼き体験、バードウオッチング、木工教室、草木染などの体験を行いながら、森林に親しむことができると好評なんですよ。
また、庭の樹木が枯れかけているとか、このキノコは食べられますかといった県民の皆さんからの相談が年間約200件ほど寄せられます。こうした問い合わせにもできる限りお答えするようにしていますので、気軽にお尋ねください。県民の皆さんに森林や林業の大切さを伝えていくことで、一人でも多くの方に森林や林業がわたしたちの生活に密接にかかわっているものであることを分かっていただければうれしいですね。
わたしたちにさまざまな恵みをもたらしてくれる森林や、その森林を管理する林業、木材をはじめとする森林資源に関する研究や普及啓発などの地道な取り組みは、まさに、県内の森林や林業を支える「縁の下の力持ち」なのですね。きょうはありがとうございました。
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