●今回は、自然保護課の紫垣英道課長にお話を伺いました。
「自然保護」については人々の関心が高いと思います。自然保護課ではどのようなことをしているのですか?
絶滅のおそれのある動植物を保護し、自然環境学習など人と自然との触れ合いを通して自然保護を普及啓発していくこと、鳥獣保護法にかかわる狩猟の適正化を図ること、国立公園・県立公園などの自然公園の利用・保護計画を立てること、この3つが大きな柱といえます。
現在、天草にビジターセンターを建設中とのことですが?
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| 熊本県富岡ビジターセンター完成予想図 |
国立公園には公園内の自然や民俗を紹介するビジターセンターがあります。現在、上天草市松島町にある天草ビジターセンターは、上天草の天草五橋や松島の景勝地のほか、干潟に生息しているハクセンシオマネキなどを紹介しています。それに対して、平成17年4月にオープン予定の新しいビジターセンターは、天草郡苓北(れいほく)町の富岡城址に建設中で、天草下島や西海岸の拠点と位置付けています。苓北町はサンセットライン(※)のスタート地点でもあり、自然だけでなく独特のキリシタン文化も組み合わせて、観光のルートになることを期待しています。また、地元の方の勉強の場としても考えています。近くにある九州大学の臨海実験所の協力を得て、地域主体で整備を進めているところです。
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サンセットライン:天草西海岸を走る国道389号は、天草灘に沈む美しい夕日を見ることができることから「サンセットライン」と呼ばれている。 |
シカによる植物の被害が大きな問題となっているそうですが?
シカは1平方キロメートル当たり2〜5頭生息しているのが適正とされ、熊本県の場合は7,000頭くらいが妥当なのですが、実は約48,000頭もいます。それも阿蘇郡高森町から球磨地域に至る九州山地に集中しています。この地域の山頂付近では、シカが植物という植物を食べ尽くし、残っているのはトリカブトなどの毒草だけといっても過言ではないほどです。シダ類などで絶滅危ぐ種に指定されているような貴重な野草も食べ尽くされています。森林の被害面積はどんどん増加し、平成14年度までの累計で12,474ヘクタールに上っています。「どうにかしてください」と自然保護団体から要望があるほどの被害なんです。森林被害の増大は林業経営を圧迫するだけでなく、土砂災害の防止や水源かん養など森林の公益的機能の低下も招きます。そこで頭数管理のために、狩猟期間の延長をしたり、補助金を出したりしています。平成21〜22年には適正な数になるようにしていきたいと思います。
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| 鹿による食害の状況(白髪岳) |
シダ類のほかにも絶滅しそうな動植物は熊本にたくさんあるんですか?
ありますよ、たくさん。それを啓発するために平成10年3月に『熊本県の保護上重要な野生動植物−レッドデータブックくまもと−』を作成しました。その中には、絶滅の危機が増大している種として、オオクワガタやムツゴロウなども入っています。「オオクワガタが絶滅危ぐ種ですか?」と、身近な生物たちがいかに絶滅の危機にひんしているかを初めて知って、がく然とする方もいます。人間の生活が便利になる中で、野生生物の生息地が減ったり生息環境が悪化したりしています。それに伴って絶滅危ぐ種が増えているようです。それは、生態系のバランスが崩れつつあることを意味します。人間も生態系の一員ですから、いつか手痛いしっぺ返しを受けることになりかねません。そうならないためにも、常に自然に対して目を向けることが大事なのです。今年3月に発行した『熊本県の保護上重要な野生生物−レッドリストくまもと2004−』での掲載種数は1,402種となっています。このレッドリストは県のホームページにも掲載していますので、ぜひ一度ご覧いただきたいです。
先日ある海岸で生息調査を行いました。一見ただの干潟でしかないんですが、実は貴重な生物が数多く生息している素晴らしい所なんです。そういうことについても、一つずつ周知していくことが必要なんだなと思います。ただ、保護し過ぎてはいけないという面もあるのが難しいところです。
保護することがかえって自然のバランスを乱すこともあるんですね
生物がバランスよく生きていくために、私たちは自然の摂理をきちんと勉強していかなければいけません。地球規模の異常気象の影響や、外来種の問題など課題はたくさんあります。そんな中、住民の方が、NPO(民間非営利団体)やボランティアとしていろんな面から応援してくださる機会も非常に増えました。傷ついた鳥獣を保護したり、自然公園をパトロールしたり、素晴らしいことです。今後も、一人でも多くの方々とパートナーシップを組みながら、自然保護に取り組んでいきたいと思います。
『自然保護』。言うのは簡単ですけど、実行するのがどんなに難しいかよく分かりました。私たちももっといろんな生物の実態を“知る”必要がありますね。ありがとうございました。 |