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赤ちゃんの発達を科学する!親子の可能性を広げる理論派育児

2020.05.28

子育て環境が変化する時代に
危機感を覚えて独立

熊本市中央区琴平の住宅街の一角に、赤ちゃん連れがこぞって集う場所がある。赤ちゃんの発達教室『ままこや』は、育児の悩みを科学的な視点から解決するサロンとして、全国から注目を集める存在だ。この場所を運営する山野井さんは、理学療法士としてこれまでに3000人を超える親子を診てきた経験の持ち主。十数年前から今日に至るまで、赤ちゃんを取り巻く環境は変化しているにもかかわらず、その変化に応じた適切なアドバイスがもらえないまま、孤立する親子の現状に危機感を覚えた山野井さん。“もっと赤ちゃんとママに近い距離感で、いつでも気軽に集える寺子屋のような場所が作りたい”と独立を決意。平成24年、念願の『ままこや』を立ち上げた。

明るい笑顔が印象的な山野井さん。プライベートでは3人の子どもを育てる母として、にぎやかな日々を送っている。

山野井さんが日々サロンで行うのは、新生児が歩くまでの発達を、科学的な視点からサポートするというもの。首の座りから寝返り、ずりばい、ハイハイに至るまで、それぞれのステップに応じた動きをマスターすることで、赤ちゃんの心と身体に備わっている潜在的な能力を引き出すことができるというのだ。「まず、基本は正しい抱っこの実践ですね。抱っこをすることで赤ちゃんは体幹が鍛えられ、股関節も柔軟になり、心も安定するなどいいこと尽くしです。他にもおむつ替えをする際に、股関節をほぐしてあげるとか、着替えをするついでに肩関節を回してあげるとか。日々の育児の中にちょっとしたコツを取り入れるだけで、赤ちゃんの心と身体はどんどん応えてくれますよ」と山野井さんは瞳を輝かせる。

どんなに泣き叫ぶ赤ちゃんも彼女の手にかかればピタリと泣き止む。赤ちゃんが泣く理由を瞬時に察知することでなせる技だ。

生まれた日から始まる発達
幼少期の土台を育む

生まれてから、歩き出すまでの“発達”が、幼児期の意欲や運動能力などに影響する。発達という分野は、少しずつ注目を集めているが、独立した当初は周囲から理解を得られず苦労したことも。子育てに対して、科学的根拠のない根性論や本能論が持ち出されることも少なくなかった。そうするうちに、自分自身も子育てをする立場になった山野井さん。専門的な知識があったとしても、実際に赤ちゃんを産み育てるのは思った以上の厳しさだったとか。「改めて自分の活動は世の中に必要だと確信が持てましたね(笑)」と、自身の出産経験を振り返る。時には自身の苦い経験談も笑いに変える、ユーモアあふれるキャラクターも魅力のひとつだ。

「抱き癖がつくと言われて」というお悩みには「触れ合いは親子の絆を育む大切なポイント。気を付けるべきは、理論に基づいた正しい抱っこの仕方です」と人形を使って、分かりやすくレクチャーするオンラインサロンでのひとコマ。

山野井さんが、赤ちゃんの発達の視点から発案した室内遊具。テーブルや雲梯(うんてい)など多彩な使い方が可能で、赤ちゃんから幼児まで幅広く使える万能遊具だ。
教室でのワークのほか、全国での講演会やイベント、育児アイテムの開発など、発達のスペシャリストとしての活動は多岐に渡る。この夏には、ノウハウを1冊にまとめた著書『歩くまでの発達ガイドブック』を刊行予定。

細かい日常の悩みを解消する
オンラインサロンで繋がりを

今年4月に開講したオンラインサロンでは、すでに全国の子育て世代から厚い信頼を得ている。「みんな聞きたくても聞けなかったことが多かったんだなと感じています」と山野井さん。寄せられる質問は“夜泣きはどう対処する?”“赤ちゃんに水を飲ませてもいいの?”などの細かい日常の悩みから、発達に関する悩みまでさまざま。これだけSNSが発達していても、明確な答えが見つからないからこそ必要とされる存在なのだ。「悩んでいたのは自分だけじゃなかったんだと喜んでもらっています。オンラインの相談会では事前に質問をいただくなどで、質問できなかった方も周りの質問を聞きながら学んだり、子どもが寝た後に動画を見たり。それぞれのタイミングで関わり合えるのが魅力ですね」。

山野井さんの育児のポイントは“手伝わないこと”。「大怪我をしないように、洋服をつまんではいますが、子どもが自分の身体能力を見誤らないようになるべく手は貸しません」と山野井さん。

子どもの足の指の理想は、きちんと1本1本隙間が空いていること。「最近では、フローリングの家が増え、足の踏ん張る力が弱くなっている」と山野井さん。置き畳やマットで子どもの発達を支える環境を提案している。
牛乳パックと新聞紙を段ボールに詰めて強度をつけた自作の積み木。2歳の娘も動かせる程度の適度な重さが筋力を養う。「古くなったら積み木の上を歩く時、ちゃんとバランスを取っているか、そんなところを観察しています」。

育児において大切だと思うことは? と、問うと 「悩みはその時に解決すること」と山野井さん。赤ちゃんの発達は、日に日に変わっていくもの。時には、何か月も前から気になっていたけど、そのままになっていたことが原因で、将来的な子育てがつらくなる原因になることもあるという。「育児の悩みは大小さまざまですが、赤ちゃんのそばで見守る中での“気がかり”はやっぱり見逃せないんです」と話す。「昔からどうして育児を理論的に考えちゃだめなの?と不思議でした。子どもを産んだ途端に本能的にわかる、なんてことは少なくとも私の場合はなかったです。私たちはマニュアルを覚えることを求められてきた世代でもありますから、今の親世代にフィットする理論的な育児は、“母性”という本能を開花させるきっかけになると信じています」と語る山野井さんは、発達の喜びを一組でも多くの親子の元へ届けるために、今日もサロンの扉を開けている。

子育てはどんなに頑張ってもうまくいかないことの連続。「“私だってこんなにやってるんだから!”と言いたくなるエネルギーを、子どもと笑顔で向き合う活力に変えていきたいです」。

ままこやの写真
DATA

ままこや