体調を崩しやすい季節の変わり目は、体を内側から整えてくれる食事でパワーを養い、日々を健やかに過ごしたいもの。そこで、手軽に作れる薬膳の料理教室として定評のある『enna kitchen(エンナキッチン)』の宮本春奈(みやもとはるな)さんに、夏の朝をテーマにしたレシピを教えてもらった。

“太らないため”の食生活ではなく“健康的に過ごすため”の食生活を。

熊本市中央区南坪井町にあるサロン&カフェバー『Livibossa(リビボッサ)』。中をのぞくとカウンター越しに「こんにちは」とにこやかな笑顔をみせてくれたのは、薬膳フードデザイナーの宮本春奈さんだ。宮本さんは毎月5~6回、この場所と甲佐町のレンタルスペース『やまぼうしの樹』、水俣の『みなまるキッチン』で薬膳料理の教室を開講している。

宮本さんが薬膳に興味を持ったのは、30代後半に差し掛かってから。元々、体を動かすことが好きで、スケジュールの合間に運動をしたり、食事に気を遣いながら、体のバランスを整えていたという。「仕事はハードでしたが、30代前半までは、体調を崩すことはほとんどありませんでした。けれども、徐々に体調の優れない日が多くなってきて…。改めて生活を見直したところ、“太らないため”の食生活こそが、不調の原因だったと気付いたんです」。
 

東京の服飾専門学校を卒業し、アパレルメーカーで10年以上経験を積んだ後、帰熊。現在は東京の薬膳料理教室『FOOD and LIFE』の認定講師として活動する傍ら、2019年に薬膳料理教室『enna kitchen(エンナキッチン)』をスタート。

太らないことを意識した食生活が、不調を招く原因となっていたことを自覚した宮本さんは、持ち前の行動力で料理の世界の扉をたたく。体を内側から整える食事の在り方を学ぶ中で、宮本さんが一番しっくり来たものが“薬膳”だったとか。「私たちの体は、暑さや湿気など、自然の影響を想像以上に受けているものですが、それを食事で緩和しようというのが薬膳の考え方です。4000年以上の歴史を持つ中国発祥の食文化は、日本の気候にも合っているんですよ」。そう話す宮本さんが差し出してくれたのは、和の装いの薬膳料理だった。

この日の献立は、小豆ごはん、きゅうりともやしのナムル、大根の梅干し和え、冬瓜と豆腐の味噌汁、ハトムギ茶。

夏の食卓のポイントを尋ねると「薬膳の大きなテーマでもある“消化”です」と宮本さん。「日本は湿度の高い土地柄ですが、この湿気が体にたまると消化不良や食欲不振、むくみを引き起こすと言われています。だからこそ、食材の力を借りて、体の中の巡りを良くすることが大切です」

主食は、水分の代謝を良くする小豆を、ゆで汁とお米で炊き上げた小豆ごはん。副菜は、消化を整えるもやしときゅうりのナムル、消化を促進する大根と梅干しの和え物、潤いを与えつつ、体の中の余分な水分を排出する利水作用の高い冬瓜(とうがん)と豆腐のお味噌汁。飲み物は、体にこもった熱を発散するハトムギ茶と、夏バテ知らずの体をつくる、薬膳の知恵が詰まった献立だ。

「旧暦では、6月の気候が夏のピークと言われています。今の時期に食で養生しておけば、夏バテせずに暑さを乗り切れると言われているんですよ」と宮本さん。

 

 

食材の特性を知ることで幅が広がる薬膳料理

洋食の薬膳は、生ハムとなますのサンドウィッチ、きゅうりと玉ねぎのスープ、緑茶ミントティーのラインナップ。

宮本さんが次に披露してくれたのは、洋食好きにはたまらないサンドウィッチ。ただ、生ハムやチーズ、レタスにプラスしたのは意外にも“なます”(大根とニンジンを細く切って酢あえしたもの)。「味のポイントとなる生ハムとチーズに、体の余分な熱を取ってくれるレタスときゅうり、消化を整える作用がある“なます”を合わせました。きゅうりと玉ねぎのスープも水分の代謝を上げてくれる、夏にピッタリの一品です」。中華のイメージが強い薬膳だが、食材の特性を知り、食べ合わせを工夫すれば、料理の幅は無限に広がる。今回は特別に「きゅうりと玉ねぎのスープ」のレシピを教わった。

夏の万能食材きゅうりを使った今こそ食べたい特製スープ

◆材料◆
きゅうり3本、玉ねぎ1/2個、昆布だし300ml、豆乳200ml、冷やご飯30g、塩小さじ1鍋

◆作り方◆
①    鍋にオリーブオイルを敷き、玉ねぎときゅうりをしんなりするまで炒める。
②    ①の鍋に、昆布だしと隠し味の冷ご飯を入れて食材が柔らかくなるまで10分ほど煮る。
③    具材が柔らかくなったら、ミキサーでペースト状になるまでかき混ぜ、豆乳と塩を加えてひと煮立ち。スープ皿に盛り付け、輪切りにしたきゅうりとオリーブオイルを垂らせば完成。

むくみの原因となる体の中の余計な水分を排出しながら、体に必要な潤いを与えてくれるきゅうりは、夏に積極的に取りたい野菜のひとつ。
クセのない昆布だしとともに加えたのは、味のポイントとなる冷ご飯。ほんの少し加えるだけで、コクのあるまろやかな口当たりのスープに変わり、とろみ付けの役割も。
食材の効能をダイレクトに体に届けるため、味付けは塩だけ。「旨味を引き出す調理法とシンプルな味付けを心掛けています」と宮本さん。

 

 

熊本の食材の魅力を生かした薬膳で豊かなライフスタイルを発信

屋号の『enna kitchen』の“enna(エンナ)”とは、スリランカ語で“おいで”の意味。アーユルヴェーダ発祥の地であるスリランカを旅した際に印象的だったのは、人々の穏やかな空気感。宮本さんはその根底に流れる“食”のパワーを広めたい、との思いから名付けた。

ひとつひとつの食材の特性を知ると、これまで何気なく手に取っていた食材を選ぶことが楽しくなる。さらに、心と体が少しずつ整ってくることを実感すると、食べることがうれしくなる。季節の移ろいや体の声に耳を傾けながら日々の食卓をつくる薬膳を通じて、宮本さんが目指すのは、健やかな日常を過ごすための土台づくりだ。「“食”を意識するだけで心と体に小さな変化が訪れるもの。ゆっくり継続することで、セルフケアができるようになったらいいですね。今後は、熊本の食材の魅力を生かした薬膳をベースに、そこから派生する豊かなライフスタイルを提案していきたいです」と自らの抱負を語る宮本さんが、これから薬膳とともに歩む、新たな食の未来が楽しみだ。

DATA

enna kitchen(エンナキッチン) 

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