KININARU! KUMAMOTO

本文へ

くまもとの最新情報満載! 気になる!くまもと

会員登録

個性際立つ古本屋を巡り奥深い古本の世界の旅へ

2020.06.04

この街に「舒文堂(じょぶんどう)」あり。創業144年の名物古本屋

上通りアーケードから並木坂に入るとすぐ右手に、独特の雰囲気を醸し出す古本屋がある。それが『舒文堂 河島書店』だ。店先には手頃な価格帯の古本がワゴンに陳列してあり、入り口を進めばどこを見ても本に囲まれ、まるで本のジャングルのよう。さらに奥へと進めば、歴史を感じる文献や貴重な古書も多く、聞けば4万点の蔵書があるというから驚く。九州・熊本の郷土誌や古文書から、料理本などの専門書までそろっており、好みの本を探して、老若男女問わずさまざまな人が店を訪れる。かつて夏目漱石も通っていたという古本屋は、創業144年を迎えた。

並木坂に面した一軒。『舒文堂』という店名には「文を舒(の)ばす」=“書物を広める”という意味が込められている。

分野ごとに並べられた書棚。お客さんが持ち込んだ本の買い取りも積極的に行う。

店主の河島一夫(かわしまいつお)さんはこの店の四代目。「古本は、読むためはもちろん、集めるという点でも楽しいもの。例えば著者の直筆のサインが書かれたサイン本は、新書で手に入らなかったら古本屋で探す人が多いんです。また、読むための本ではなく、本のデザインそのものを楽しみたいという方は、美しい装丁(そうてい)本や気になる装丁家の本をかたっぱしから集めたりします。その場合、読み物というよりは“雑貨”のような存在になるかもしれないんですが、それでもいいと思っています」。さらに河島さんはこう話す。「熊本の歴史を知ることのできる文献やあらゆるカテゴリーの専門書など、調べ物として古本を求める方も多いです。他にも、めくりながら懐かしんだり、新しい発見があったりと色んな楽しみ方がありますよ」。

四代目店主を務める店主の河島一夫さん。多くの人に古本の魅力を伝えている

街の歴史を物語る、昭和初期の絵はがきやチラシなども保管してあり、“街の資料館”のような役割も担う。
店奥のスペースには、貴重な和書の棚がある。創業時は和漢書を専門としていたとあって、歴史を感じる空間だ。

近年、業界自体の売り上げは下降の一途をたどっており、歴史のある老舗とはいえ例外ではない。さらには、今年に入り世界中で猛威をふるった新型コロナウイルス感染症の影響で古本の市場が止まり、店舗も一時休業に追い込まれるなど厳しい状況が発生した。そこで以前より取り組んでいたネット販売やSNSでの情報発信が力を発揮しているという。店にある古本を“自分の財産”と話す河島さん。「この文化をこれからも守っていきたいですね」。街なかにどっしりと根を下ろし存在している古本屋は、古本の世界の魅力をこれからも広めていきそうだ。

店先や店内のあちこちにフクロウのオブジェや置物が飾られている。なんでも“知恵の象徴”なんだそう。

HIKE
DATA

舒文堂 河島書店(じょぶんどう かわしましょてん)

  • [所在地]熊本市中央区上通町11-2
  • [電話番号]096-352-1701
  • [営業時間]10:00〜19:30
  • [定休日]火曜日
  • [URL]http://jobundou.jp

唯一無二の雰囲気漂う
新進の古本屋とは?

同じ並木坂の通りにある古本屋をもう一軒訪ねてみよう。2016年10月に誕生した『古書 汽水社(こしょ きすいしゃ)』。軒先に置かれた本棚の本を手に取り、本選びに没頭する人の姿を横目に店の中に入ると、古本とレコードが所狭しと陳列された店内と、ほんのり明るい灯りが、どこかミステリアスな印象だ。

前述した『舒文堂 河島書店』の目と鼻の先にある『古書 汽水社』。入り口には、店主の共感する本やイベントの告知が貼られており、その一角を眺めるだけでも好奇心を触発される。

手作り感のある本棚にぎっしりと並ぶ本たち。古本をメインに、新刊書籍やレコードなど品揃えも興味深い。

この時代に古本屋が新規オープンというだけでも驚きだが、店主の佐藤慶太(さとうけいた)さんは神奈川県から移住してきたという。「妻の地元でもある熊本には以前からよく訪れていて、その中でも上通り・並木坂の活気があるけど落ち着いている雰囲気がとても気に入って出店を決めました」。そう語る佐藤さんは、東京で中古レコード店に約9年間勤め、その中で次第に独立したいと考えるようになったそう。そこでもう一つの柱として昔から好きだった古本を扱うため、東京の古本屋でさらに3年以上修業の末、晴れて熊本での出店に至ったという。そんな佐藤さんいわく、古本の魅力は「一期一会」。たまたま見つけた1冊が人生を変えるかもしれない、そういう未知の本との出合いは古本屋ならではなんだとか。
また、古本屋ながら新刊書籍も少しだけ扱う。
「DONATION ZINE 最近の好物 100人 」という新刊書籍もそのひとつ。これは新型コロナウイルス感染症の影響を受けた書店を支援するため、有志で制作されたミニコミ誌を販売した書店に、その利益を100%ドネーション(寄付)することを目的とした一冊。そうした考えに共感した佐藤さんは、その販売利益を熊本市内のライブハウスと、新刊書籍を中心に取り扱う独立系の新刊書店に寄付している。「音楽と本に救われてきた人間なので、微力でも協力できれば」と話す。

「子どもの頃に藤子不二雄の漫画を買い集めていて、そのうち古本屋で探すようになったのが、古本との付き合いの始まりです」と店主の佐藤さん。

古本屋と聞くと、少し気難しいイメージを持つ人もいるかもしれないが「日常の中で“自分だけの特別”が見つかる店」を目指す佐藤さん。買い物帰りやカフェへのお伴を探しに立ち寄る人、お目当ての本を探す人、本を売りに来る人など、店を訪れる理由はさまざま。みな目的が違うように、古本の存在意義も人それぞれ。いい本と巡り合い、新しい世界を知るのが楽しみになった。

「DONATION ZINE 最近の好物 100人 」の初回入荷分は、書棚に並ぶと、瞬く間に売り切れたという。
古書 汽水社(きすいしゃ)
DATA

古書 汽水社(こしょ きすいしゃ)

  • [所在地]熊本市中央区城東町5-37-1F
  • [電話番号]096-288-0315
  • [営業時間]11:00〜21:00
  • [定休日]木曜
  • [URL]http://www.facebook.com/kisuisha