くまもと復興レポ MINNA-GENKI
#05 熊本県動物愛護センター

Share

創造的復興を目指すくまもと復興レポ「MINNA-GENKI」の第5回は、平成28年熊本地震をきっかけに、その名称や役割が大きく変わった「熊本県動物愛護センター」をご紹介します。

熊本市東区戸島にある「熊本県動物愛護センター」。路地道を入っていった先に、かわいい動物のイラストが描かれた明るい看板が出迎えてくれます。

ここには、熊本市以外の県内全域の保健所に保護されたものの譲渡先が決まらなかった犬・猫や迷い犬・猫が運ばれてきます(熊本市は「熊本市動物愛護センター」へ)。飼い主を待つ犬・猫たちが、さまざまな動物の資格を持つ専門員によって、大切に保護されています。

同センターは、以前は「熊本県動物管理センター」という名前で、その役割も今と少し違いました。県内の保健所から犬・猫が預けられることは今と同じですが、基本的にここは犬・猫が最終的に行き着く「殺処分するための施設」だったのです。しかし、平成28年熊本地震の発生と、そこから復興への道筋の中で、このセンターに求められる役割が大きく変わっていきました。

Interview

松本さん写真

熊本県健康福祉部 健康危機管理課
動物愛護班長

松本 辰哉さん

地震で逃げ出した犬・猫を保護

ここは、昭和54年(1979年)に「熊本県動物管理センター」として設立されました。犬・猫の「管理」を行う施設として、県内で保護されたものの行き先のない犬・猫の殺処分を行っていたんです。しかし、全国的に動物愛護と「殺処分ゼロ」への機運が高まってきて、当センターでも愛護の取り組みを行うようになっていきました。そんな時に熊本地震が起こりました。

県内全域でペットが地震を怖がって逃げ出し、同センターにも多くの犬・猫が保護されてきました。この多くが野良ではなく、どこかで大切に飼われていた子たちばかり…。そこで当センターでは、この犬・猫たちを無事、飼い主のもとに返せるよう、半年間の殺処分停止を決定しました。とはいえ、当センターには動物を保護するための十分な設備がなかったので、急造でいろんなスペースをつくりました。

“管理”から“愛護”へと拡大

熊本地震によって、私たちは改めて「命の大切さ」を学びました。地震がきっかけだったとはいえ、この保護活動をさらに進めるために、平成28年(2016年)12月に県が策定した「熊本復旧・復興4カ年戦略」の中で、「犬猫の殺処分ゼロを目指す」ことを掲げました。創造的復興の目標の1つとして「命を大切にし、やさしさあふれる人と動物が共生するくまもと」を実現するためです。ここから、「熊本県動物管理センター」の在り方も「管理」から「愛護」へと大きく広がることになりました。

地震直後の保護の様子。保護のための設備が十分ではなかったため、敷地内にあった家屋にビニールシートを敷いて、保護環境をつくりました

センターに寄せられたペット用品の寄付品

復興POINT平成29年(2017年)4月より
「熊本県動物愛護センター」に。
殺処分ゼロを目指す!

名称を「熊本県動物愛護センター」と新たに、殺処分ゼロを目指す「動物愛護のための施設」として新しいスタートを切りました。敷地内には犬・猫を保護できるよう、コンテナや屋根などを設けて施設設備を新たに設置。清潔で快適な環境を保っています。譲渡会などで多くの人が訪れるようになったことから、明るい色合いのかわいい看板とイラストで敷地内を飾り、訪れやすい雰囲気づくりにも取り組んでいます。

母屋も明るい雰囲気の建物に


犬用の運動場も設置。複数置かれたコンテナには、ペットの保護の他、譲渡の際の研修などに使える部屋も整えています 

他所から寄贈された屋根を設置し、犬の保護エリアに。シャンプーの設備なども新設されました

猫は冷暖房完備の屋内で保護。一頭一頭名前を付けられ、大切に保護されています

平成31年(2019年)4月より所長に就任した獣医師の田代重幸さんは、中で働く人の仕事も大きく変わったと話します。「以前は月〜木曜日に県内各地の保健所から集まった犬・猫を週末に処分する、というのが主な業務内容でした。しかし今は、中にいる犬・猫のお世話をすることが主な業務になっています。職員たちも、ありったけの愛情を注いで動物たちを保護していますよ」。現在は犬113頭、猫38頭(8月8日現在・一時預かり除く)が保護されています。

清潔で冷暖房完備のコンテナの中で、大事に保護される猫ちゃん

敷地内でも元気に運動できます。若い動物専門員も多く、フレッシュな雰囲気です

職員も6名(2015年度)から14名(2019年度)へと増員。獣医師と動物専門員が、まだ見ぬ飼い主を待つ犬・猫が少しでもスムーズに譲渡されるよう、保護するだけでなくしつけや人に慣れるようなお世話にも取り組んでいるそうです。

ホームページも見やすくリニューアルし、SNSでも保護犬・保護猫の情報を頻繁に更新し、少しでも新しい飼い主と出合えるように取り組んでいます。また、定期的に同センター内や県庁プロムナードで譲渡会も行っています。

職員全員で、ホームページやSNSの更新作業を行います

県庁で開催された譲渡会の様子

このような取り組みのかいあり、実際に殺処分数も減っています。敷地内での死亡数は、犬の場合2015年度615頭→2018年度239頭(安楽死は119頭)に、猫は2015年度1,756頭→2018年度79頭(安楽死はゼロ)になりました(いずれも、保健所やセンター内での死亡やセンターの安楽死を合わせた数字)。さらに、譲渡率は犬で2015年度58.3%→2018年度74.8%に、猫は2015年度14.3%→2018年度69.6%へと向上しています。

殺処分ゼロを目指す中で、保健所に来る犬・猫を減らすための「入口」への取り組みも行われています。小学校などを訪問して、犬の心音を聴診器で聴かせたり、動物を家族の一員として大切に飼うことの大事さを伝える「命の教育」を実施。さらに、野良猫の避妊去勢費用補助や、地域猫活動への補助金、迷子札の配付や啓発活動なども行っています。ボランティアや愛護団体とも連携を強め、県全体で「殺処分ゼロ」を目指しているのです。

「熊本県動物愛護センター」では原則月に1回、譲渡会が開催されるほか、随時、譲渡に向けた問い合わせや見学を受け付けています。

熊本県の動物愛護は、熊本地震からの学びを生かし、創造的復興に向かっています。“命を大切にし、やさしさあふれる人と動物が共生するくまもと”の実現に向けて、動物愛護に関するさまざまな取り組みを進めていきます。

Data

熊本県動物愛護センター

  • 熊本県熊本市東区戸島町2591
  • 電話番号:096-380-3310
Official Website
Facebook