KININARU! KUMAMOTO

本文へ

くまもとの最新情報満載! 気になる!くまもと

会員登録

  • 復興
  • スポーツ
  • 行く
  • 食べる
  • 知る
  • くまモン
  • プレゼント

くまもと復興レポ MINNA-GENKI
♯11 公益財団法人
阿蘇グリーンストック

Share

創造的復興を目指すくまもと復興レポ「MINNA-GENKI」の第11回は、阿蘇地域の「野焼き」と草原維持のサポートに取り組む「阿蘇グリーンストック」をご紹介。阿蘇の草原は地震で地割れなど大きな被害を受けましたが、美しい草原の復旧・維持・そして発展のために、さまざまな取り組みを行っています。

阿蘇市の外輪山の麓、内牧温泉から程近い場所にある大きな建物を訪れました。こちらが「公益財団法人 阿蘇グリーンストック」で、阿蘇の広大な自然を守るために、1995年に設立されました。草原の維持のため野焼きの支援を中心に活動しています。

建物はいくつかのエリアに分かれていて、「草原学習館」には、阿蘇の草原や野焼きについて学べる資料が展示されています。

「野焼き」とは、毎年1度、冬に枯れて茶色になった草原を燃やすことで、害虫を駆除し、枯れ草を取り除き、青々とした新しい草が生えるように促す作業です。阿蘇の希少な高山植物を守ったり、牛の放牧地や採草地を確保するためにも必要です。広大な草原に火が付き、一気に燃えていくさまは壮大で、阿蘇に春の訪れを告げる風物詩となっています。

2月下旬〜3月上旬に行われる阿蘇の野焼きは、書物などによると1000年前には行われていたそうです。しかも地層を調べると、実は1万年以上前から野焼きが行われていた形跡があるとの情報も。秋吉台(山口県)の草原は、約1,300ヘクタール。一方で阿蘇の草原は、その17倍、22,000ヘクタールの広さがあります。この広大な草原を維持できているのも、長年にわたってこの野焼きの文化が守られているからなのです。

阿蘇の人の生活の知恵として代々受け継がれてきた野焼きですが、ここ十数年で野焼きを行う人たちの高齢化、後継者不足問題が進み、野焼きの技術・知識の継承も大きな課題となりました。そこで、「阿蘇グリーンストック」が野焼きボランティアを募集し、広大な草原の野焼きや、その準備として草刈りを行う「輪地切り」をサポートしています。人材不足解消のために、地元の牧野組合と「阿蘇グリーンストック」が連携し、ボランティアと共に毎年の野焼きを行うことができている……。そんな時に起こったのが熊本地震でした。

Interview

桐原章さん写真

公益財団法人 阿蘇グリーンストック・専務理事
桐原 章さん

野焼きの後継者不足に悩む
阿蘇の草原を、地震が直撃

私たちが野焼き・輪地切りの支援活動を始めて、今年(2020年)で21年目になります。その中でも、熊本地震は大きな出来事でした。
阿蘇の草原も多大な影響を受けました。北外輪山は岩が多い立地なので、崖崩れが多く起こりました。また、斜面がはがれ落ちるような土砂崩れもありました。仙酔峡の方や高岳周辺もひどかったですね。南阿蘇エリアや西原村方面は、地割れも多く起こりました。
草原に加え、草原に入るための牧野道や防火帯(火が外に移らないよう、草を刈り込んでいるエリア)の損壊、牧野内の水源の枯渇など、野焼きの存続の危機にもつながる被害が多くありました。

地震の次の年から、
野焼きができなかった地域も

実際、地震の翌年の野焼きでは、阿蘇の草原の野焼き面積(約16,000ヘクタール)の内、7パーセントのエリアが野焼きを断念せざるを得ませんでした。野焼きを行うには、その前の年の夏から、火が外に移らないよう草を刈り込んでおく輪地切りという作業を行ったり、野焼きの際には軽トラックに水を積んで乗り込んだりするのですが、作業道の損壊で車が入れなくなったためです。特に南阿蘇エリアでは、約700ヘクタールという広さの草原が、野焼きされずそのままになってしまいました。

復興POINT被災牧野を多方面から支援!
野焼きボランティアの拡大に加え
世界文化遺産登録への動きも

震災支援の牧柵張りの様子

「阿蘇グリーンストック」がまず行ったのは、牧柵修理や牧野道修復の支援活動。さらに、野焼きボランティアとして登録する会員を中心に義援金を募り、被害を受けた牧野組合へ寄付したり震災支援活動資金に役立てました。

そのような活動の甲斐あり、今では被災地の一部地域を除いて、ほとんどのエリアで野焼きを再開させることができているそうです。
「1年、2年と野焼きの期間が空いた草原を燃やすときは、いつも以上に気を付けて、安全対策を行いました。枯れ草の量が通常より多くなるので、火の勢いも強くなるのです」と桐原さん。ちなみに、地割れなどで地面が露出した箇所は、また自然に緑が芽吹くのを待つしかないのだとか。

地震後も野焼き・輪地切りボランティアの登録者数も増え続け、今は1,000人ほどの会員がいます。昨年度(2018年度)は延べ2,700名を超える人が、野焼き・輪切りに参加。野焼きという文化自体に興味を持った人、普段登山を趣味にしていて、山へ恩返ししたい人、阿蘇の自然を守りたいという意思を持つ人。参加者の思いはさまざまで、熊本県はもちろん、福岡や全国各地からボランティアに来てくれるのだそう。2020年の野焼きボランティアの研修会では、参加者の三分の一が県外からの参加者でした。

初心者研修会の様子

ちなみに、ボランティアに義務付けられている講習会では、野焼きの安全管理などの基本知識から、実際の作業のシミュレーションまで行います。火が燃えさかる危険な現場なので、安全対策がとても大事です。「阿蘇グリーンストック」では、野焼き安全対策マニュアル作成やリーダー養成研修会なども行い、阿蘇で伝わって来た知識・技術の継承にも努めています。

野焼きの際は、地元の人が火入れを行い、ボランティアはその火を消す作業をお手伝いします。また、9月〜11月頃には、火が他のエリアや道路などに移らないよう、草を刈り込んで防火帯を作る「輪地切り」も行われ、こちらにもボランティアが参加しています。阿蘇の草原全体で、530キロメートルもの距離の防火帯をつくる必要があるため、これまた大変な作業です。

夏に行われる「輪地切り」の様子

ところで、もし「野焼き」をしなかったら、阿蘇の草原はどうなるのでしょうか?

もし野焼きをしなかったら、草原にダニや虫がはびこりますし、初夏になっても茶色いままの草が残り、枯れ草が堆積してしまいます。貴重な高原植物も育たなくなるし、根が弱くなり、雨で土が流れやすくなる危険も。長年経過すると木々が生えてきてしまい、ヤブができるなど荒れてしまうんです。

また、実は草原は水を貯める水がめの役割も果たしています。熊本市まで届く阿蘇の伏流水を支えているのも、草原の役割によるところが多いのだそうです。

今では、草を肥料にする代わりに化学肥料を使うことが多くなったり、牛を飼う人が少なくなったりして、草原の草があまり必要とされなくなりました。そのため、昔よりも草原が減ってきているんです。

明治時代と比べると、半分以下の面積まで減っているのだそう!

一方で、元々痩せた土地だった場所を、野焼きと放牧、採草によって肥沃な大地へと変える草原文化は、いま再評価されています。2013(平成25)年には世界農業遺産に認定されたほか、現在は世界文化遺産登録に向けた動きも始まっています。

何日間にもわたる草原での採草作業の際に泊まっていた、ススキで作られた「草泊まり」

野焼きによって土を豊かにする循環型農業の価値が、いま改めて認められています。阿蘇の草原の野草は完全無農薬で安心なので、畜産農家へ出荷できるかもしれないし、今人気が高まっている“あか牛”の牧畜農家が増えれば、草原を生かすことにもつながります。阿蘇地域で1000年以上続く野焼きや放牧、採草などの草原文化を守り、時代に合った形で、地域一丸となって、発展させていきたいというのが、現在の目標です。

約50年行われていなかった草千里の野焼きは、2016年2月に再開されました

この春も一斉野焼きが行われています。米塚周辺から連なる草原は2/24(日)に行われました。今後は、2/29(土)は草千里、3/1(日)は北外輪山一帯の予定です。
※雨天の場合は延期

最新の野焼き情報はこちら ~阿蘇市Website~

Data

公益財団法人 阿蘇グリーンストック

  • 熊本県阿蘇市小里656-1
  • 電話番号:0967-32-3500


Official Website
くまもと復興レポ MINNNA-GENKI

バックナンバーはこちら

Back Number