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熊本復興史 熊本の未来へ贈るギフトを「OMOKEN PARK」に託して。

2020.04.16

崩れゆく「OMOKIビル」で覚悟を決めたあの日。

 2016年4月14日と16日の2度にわたり、最大震度7の地震が熊本の地を襲った。熊本市中心部のアーケード街にある「OMOKIビル」も、震災によって解体を余儀なくされた建物のひとつだ。
「ここは元々、祖父が漆塗りの店舗兼工房『肥後塗り面木漆工場』として建てた建物です。震災前は1階にカフェ、2階に飲食店と僕が運営していたギャラリーが入っていました。カフェは熊本地震の少し前に移転し、飲食店は地震当日は定休日。けが人が出なかったことは、不幸中の幸いでした」と、当時を思い出しながら語ってくれたのは、2011年に稼業であるビル業を継いだ面木健さん。

熊本地震直後の様子を振り返る『OMOKEN PARK』ディレクターの面木健さん。

 「震災後にビルの様子を見に来た時、内装業者の方と “このビルはもうダメかもしれないね”と話をしたんです」。解体費用はもちろん、元通りのビルを再建しようにも建設費が高騰し、これまで通りのテナントビルとして再建することに疑問を抱いた。「そこで一度覚悟を決めて、中心商店街の一部を担うこの場所がどうあるべきか、少しずつ答えを探していくことにしました。

かつての『OMOKIビル』のこれまでの変遷を、自らまとめたという面木さん。実は大学生の頃、雑誌の編集部でアルバイトをしていたという経験の持ち主だ。

模索し続ける中でたどり着いた “建てない”という選択肢。

 未曾有の事態をどう乗り越えていけばいいのか、自分にできることは何かを模索する日々。明日のために、未来のために何ができるのか、と自問自答を繰り返す中で、たびたび手に取っていたのは、レイチェル・カーソンの著書『センス・オブ・ワンダー』だったと面木さん。この本はこれまで幾度となくページをめくってきた人生のバイブルのような存在だという。
「僕の心の中にあるのは、人と自然との関わりを紡ぐこと、そして次世代の人々のために自分に何ができるか、ということ。そうした中で“従来のテナントビルを再生するよりも、ミニマムで豊かな空間を仲間たちと作り上げたい”という想いが芽生えたんです」。

その想いに賛同する仲間たちが、次々とこの場所に集うようになる。
更地になったオモキビルの跡地には、“建てない建築家”の坂口恭平(さかぐちきょうへい)さんによって震災後の廃材を使ったモバイルハウス(車輪付きの小さな小屋)が建設され、地元のハンバーガー店による営業も行われた。
さらに「古着フェス」や「街中オアシス」、土木学会とコラボした「土木カフェ」や養老孟司(ようろうたけし)氏のトークショーなど、さまざまなイベントを開催しながら少しずつこの場所の可能性を探っていったという。
さまざまな出会いや経験を通じて、面木さんは“建てない豊かさ”を街の人々と享受する、という選択肢を選んでいく。

解体後の「OMOKIビル」跡地に建つモバイルハウス。商店街のアーケードの中にぽっかりと浮かぶ青空は、どこか新鮮な印象を受ける。再建までの約1年間は、“社会実験”と称してさまざまなイベントを企画したという。

面木さんが常に持ち歩いているという小さなアイディアノート。「“書くこと”で自分の考えが整理されることが多々あります。最近は、相手に伝えるために恥ずかしげもなく見せるようになりました(笑)」。
「右肩上がりの拡大・成長路線ではなく、なにもない空間の豊かさをみんなでシェアしながら、過ごす時間を充実させる方向性を示していきたいです」と、笑顔を見せる面木さん。

いつだって大切にしたい、ソーシャルグッドな視点。

 「これまで影響を受けた本や、出会った人々、それぞれの考えを取り入れながら、少しずつこの場所の構想を膨らませていきました。ここが都市と自然を結ぶ“街のなかの縁側”のような存在になったらいいな、と1年間は社会実験と称してさまざまなイベントを行いました」と面木さん。そうして持てる限りのエネルギーを注いで、仲間とともに作り上げた『OMOKEN PARK』が完成したのは、昨年6月のこと。
設計は、坂口恭平さんのモバイルハウス建築の際に出会った、建築家の矢橋徹(やばしとおる)さん。壁には、小国杉の間伐材を活用したCLTと呼ばれる断熱性や遮炎性、遮熱性に優れた建築資材を採用。奥の庭には、透水煉瓦とウッドチップを敷き詰め、かつてあった井戸も復活させた。熊本の可能性が詰まった空間だ。

日本の商店街で初めてCLTを導入した『OMOKEN PARK』の店内。何層にも重ねた木板は、十分な強度で構造躯体を支えるとともに、表面は木の温もりを感じる持続可能な循環型資源として注目を集めている。

“あらゆる世代の方に楽しんでほしい”と、入り口はフラットに。風が吹き抜ける1階フロアは、段差のないユニバーサルデザインにこだわっている。
店内では、伐採された竹のチップを圧縮して作ったテーブルや、ステンレスのストローなど、環境に配慮したアイテムを取り入れている。

 「この空間は、コンクリートを使ってないんです。だから、降った雨はちゃんと地下水に戻っていくんですよ。」と面木さんはうれしそうに声を弾ませる。
「僕は、中心市街地からすぐの距離に豊かな自然がある熊本のライフスタイルが大好きなんです。特に立田山と江津湖は、自転車ですぐにでもいける距離ですし、自然の中に居るとモヤモヤした心の内が晴れるんです。でも、そんな自然を享受できるのは、立田山の宅地造成に制限がかけられ、自然が保護されていたから。世の中には答えの出しようのないようなこともありますが、いつだって自分にできる“ソーシャルグッド”なことを追い求めています」。

『OMOKEN PARK』完成後は、全国各地から取材や視察が訪れ、多数のメディアでその試みが紹介された。一杯ずつ丁寧に描いてくれるラテアートとゆったりとしたこの空間を堪能して欲しい。

季節のフルーツを使ったタルトや定番のバナナケーキがオススメ。スイーツはすべてスタッフが店内で手作りしている。

そう語る面木さんに、最近一番うれしかった瞬間は? と尋ねると「スタッフが休日に家族と『OMOKEN PARK』に来て過ごしてくれていたこと! 」との答えが。「これから先の『OMOKEN PARK』は、“この街に住んでいてよかった”と、人々に思ってもらえるきっかけになれたら」と語る面木さんの瞳には、50年先の街の未来が映っていた。

OMOKEN PARK
DATA

OMOKEN PARK

※4月24日(金)まで新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、一時的に営業を中止しています。

  • [住所]熊本市中央区上通町7-7-1
  • [電話番号]096-288-0230
  • [営業時間]]9:00~20:00 ※営業時間・定休日は変更となる場合があります
  • [定休日]]なし
  • [URL]https://omoken-park.jp/
  • [Instagram]@omokenpark