KININARU! KUMAMOTO

本文へ

くまもとの最新情報満載! 気になる!くまもと

会員登録

  • 復興
  • スポーツ
  • 行く
  • 食べる
  • 知る
  • くまモン
  • プレゼント

Jump Up! Kumamoto 2017
小山薫堂の“情談”
#01 天草の丸いたい焼き

Share

「Jump Up! Kumamoto 2017」スペシャル企画第三弾は、くまモンの生みの親としても知られる小山薫堂さん。生まれ故郷である熊本県天草市をはじめとする熊本での活動に密着し、小山さんの胸の内に迫りました。

小山 薫堂

1964年6月23日天草市生まれ。高校まで熊本で過ごし、大学進学で上京。日大芸術学部放送学科時代にラジオ局でアルバイトを始め、大学在籍中に放送作家としてデビュー。主なテレビ番組の代表作に、「料理の鉄人」「世界遺産」「カノッサの屈辱」「トリセツ」など。映画脚本を手掛けた「おくりびと」は、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。現在は、放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティ、京都造形芸術大学副学長として活躍するほか、エッセイなどの著作、企画プロデュースやアドバイザーの仕事も数多く手掛けている。

故郷愛を通り越した、本当の魅力がここにある。

 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持ち、さらに、くまモンをこの世に誕生させた仕掛け人の小山薫堂さんは、熊本県天草市の出身です。多忙を極めながらも、昨年12月には、完全プライベートで、天草市のコミュニティFMの開局イベントを仕掛けたり、実家近くの商店街の中にあるたい焼き屋の復活オープンもプロデュース。故郷への思いについて、尋ねました。

 よく、故郷を愛していますねって言われるんですけど、実は、故郷だから愛してるんじゃないんですよ。普通に見て、とても素晴らしいところなので、もったいないな、何かしなきゃって思うんです。軽井沢や葉山をいいなと思うのと同じように、天草にはそれに匹敵するポテンシャルを感じます。

 あそこをこんな風にしたらもっと盛り上がるのにな、とか、こんなにいいところに住んでいる人たちが、もっともっとつながって元気になったらいいのにな、というのが本音なので、周囲の人たちが思われるほど、『地元を盛り上げてやろう!』という気持ちではないんです。日本全国いろんな街を見てきて、自分が生まれ育った街を客観的に見たとき、食材も風土も人も素晴らしかった。だから、魅せられて、愛してるんです。他の地よりも知っているから、素晴らしいところを見つけやすいっていうのはあると思います。それが郷土愛とえいば、そうなのかもしれませんね。

街の中を流れる川には、満ち潮になると海の魚が上がってくる。小山さんは中学生のころ、川沿いに住む友人宅の居間から釣りざおを垂らし、釣った魚を友人のお母さんに調理してもらって食べていたという。

全国の美味しいものを知り尽くす小山さんは、天草の食材は素晴らしいという。特に、豊かな海でとれる魚介への評価は高く、プライベートで美食家の知人を案内するほど。にぎりずしがお気に入りだ。

これは一大事!丸い形のたい焼きの店がなくなった!?

 小山さんは、天草市の本渡中央銀天街アーケードから歩いて3分ほどのところで育ち、アーケードは子どものころの遊び場だったといいます。そのアーケードの一角にあった、昭和22年創業の老舗「まるきん製菓」。この店のたい焼きは、子どもたちのおやつとして親しまれ、店の中は子どもたちで溢れていました。昭和40年に導入したというオリジナルのたい焼きマシーンの鉄の蓋が閉まるときに鳴る、カンッ、カンッという甲高い音が、子どもたちの笑い声とともに商店街に響いていました。

 しかし昨年5月、地元の人々に惜しまれながら「まるきん製菓」は閉店。商店街はすっかり静かになりました。

 「まるきん製菓」のたい焼きって、タイの形をしていないんです。だから、都会に出た時の田舎と都会のギャップを感じたいくつかのことの一つに、“まるきんのたい焼き”も入っています。『都会のたい焼きは魚の形をしているんだ!』と、衝撃を受けました(笑)。でも、僕にとってのたい焼きは、やっぱりこの丸い形なんです。

 昨年、「まるきん製菓」の親父さんから、閉店したという電話をもらったんです。聞けば、設備が古くなったことをきっかけに、年も年だからだと・・・。話を聞きながら、 “まるきんのたい焼き”が商店街からなくなるのは寂しいと、素直に思いました。だから、『僕が後を継ぐから、店を残しましょう!』と提案し、地元の幼なじみらと復活プロジェクトを立ち上げました。

魚の形をかたどっていない“まるきんのたい焼き”。丸い形の中に、小山さんたちのたくさんの思い出が詰まっている。ゆっくりと動きながら焼き上がるさまは、見飽きることがない。

試食会で幼なじみの高松さんと焼き立てを試食する小山さん。有名パティシエのレシピで作ったクリームは、お茶の粉末を練り込んだ爽やかな風味。「よし!これはいける。合格ラインだ!」

 新生・まるきんのたい焼きは、餡は京都の老舗和菓子屋の協力のもと秘伝のあんこの作り方を伝授してもらい、皮とクリームは、知人の有名パティシエにオリジナルで考案してもらいました。そして、店の出資者を募り、まるきんのたい焼きは究極の形で復活。たい焼きの開発には、地元の高校生たちに携わってもらいました。

 オープン後は高校生たちがアルバイトとして店に立ち、たい焼きを焼く。そして、お客さまを方言でおもてなしする店員は、地元のおじいちゃんおばあちゃんたち・・・。この商店街に地元の人たちだけでなく、観光客にも来てもらえる新しいコミュニティーができ、それが商店街復興の起爆剤となる!そう思いました。

 さまざまな人々の協力のもと実現したまるきんの究極の復活ストーリーが、全国の同じような問題を抱えた老舗や商店街の方々の勇気に繋がったらいいなと思っています。

 天草にまだまだたくさんの魅力と可能性を感じています。

 昨年12月17日にオープンした新生・「まるきん製菓」は、大当たり!連日多くの人々で賑わいを見せています。

店を引き継いだ小山さんたちとうれしそうに会話をする、元店主の金子さん。オープン前の試食会のこの日、金子さんは久々にたい焼きを焼いた。終始笑顔だった。

たい焼きの開発に携わった地元の高校生たちも試食会で大活躍。試食した一人一人から熱心に感想を聞き、オープンまでに味の調整を行った。

オープン当日は、商店街に長蛇の列!期待を膨らませていた地元天草の人々だけでなく、遠方からも多くの人が集まった。